diff --git a/src/content/ja/2019/accessibility.md b/src/content/ja/2019/accessibility.md new file mode 100644 index 00000000000..8e4b2b81060 --- /dev/null +++ b/src/content/ja/2019/accessibility.md @@ -0,0 +1,305 @@ +--- +part_number: II +chapter_number: 9 +title: アクセシビリティ +description: 読みやすさ、メディア、操作性の容易さ、および支援技術とその互換性をカバーする2019 Web Almanacアクセシビリティの章。 +authors: [nektarios-paisios, obto, kleinab] +reviewers: [ljme] +translators: [MSakamaki] +discuss: 1764 +published: 2019-11-11T00:00:00.000Z +last_updated: 2019-12-31T00:00:00.000Z +--- + +## 導入 + +Webのアクセシビリティは、包摂的で公平な社会の上では無くてはならない存在です。私たちの社会性と仕事や生活の多くがオンラインの世界に推移するにつれて、障害のある人々も分け隔てなく、すべてのオンラインの対話に参加できることがさらに重要になってきます。建築家が車椅子用の傾斜路のようなアクセシビリティ機能を作成や省略できるように、Web開発者はユーザーが頼りにしている支援技術を助けたり邪魔したりできます。 + +障害を持つユーザーの事を考えた時ユーザージャーニーはほぼ同じとなることを忘れないでください、彼らは異なるツールを使っているだけでしかありません。よく知られてるツールとして、スクリーンリーダー、画面拡大鏡、ブラウザまたは文字の拡大、音声コントロールなどがありますが、これ以外にも色々とあります。 + +ほとんどの場合、アクセシビリティを改善することでサイトを訪れるすべての人に対してメリットを与える事ができます。私達は普通、障害者は生涯その障害を抱えていると思っていますが、一時的だったり状況的に障害を持つような人も居ます。たとえばその誰かが全盲なのか、一時的な目の感染症なのか、はたまた野外で眩しい太陽の下という状況なのか。これらすべて、その誰かが画面を見ることができない理由の説明になります。誰もが状況により障害を持ちうるため、Webページのアクセシビリティを改善することは、あらゆる状況ですべてのユーザーの体験を向上させることに繋がります。 + +[Webコンテンツのアクセシビリティガイドライン](https://www.w3.org/WAI/WCAG21/quickref/) (WCAG)はWebサイトの利便性を向上する方法についてのアドバイスが纏められています。このガイドラインを分析の基礎に使いました。しかし、ほとんどの場合においてWebサイトのアクセシビリティをプログラムによって分析するのは非常に困難です。たとえば、Webプラットフォームは機能的には同じ結果となる複数の方法を提供しており、それを実現するための基盤となるコードはまったく別物になる場合があります。したがって、私達の分析結果はWebアクセシビリティ全体の単なる概算でしかありません。 + +私達はもっとも興味深い洞察を4種類のカテゴリに分類しました。それは読みやすさ、Web上のメディア、ページナビゲーションのしやすさ、補助技術との互換性です。 + +テスト中にデスクトップとモバイルの間でアクセシビリティに大きな違いは見つかりませんでした。この結果で提示されているメトリックは、とくに明記していない限りはデスクトップの分析結果です。 + +## 読みやすさ + +Webページの主な目的はユーザーの興味を引くコンテンツを配信することです。このコンテンツはビデオや画像の組み合わせなどありますが、ほとんどの場合、シンプルなページ上のテキストです。テキストコンテンツが読者にとって読みやすいことは、とても重要です。訪問者がWebページを読めない場合、訪問者はWebページに興味を持つことがなくなり、最終的には離脱してしまうでしょう。この節ではサイトが苦労するであろう3つの分野を見ていきます。 + +### 色のコントラスト + +あなたのサイトの訪問者が完璧な内容を見ることができない、さまざまな可能性があります。訪問者は色覚多様性を持ち、フォントと背景色を区別できない場合があります(ヨーロッパ系の[男性12人に1人、女性200人に1人](http://www.cvrl.org/people/stockman/pubs/1999%20Genetics%20chapter%20SSJN.pdf))。おそらく、彼らは太陽の下で画面の明るさを最大にして読んでいるため、視力を著しく損なっているのでしょう。もしくは年をとってしまい、彼らの目が以前と同じように色を区別できなくなったのでしょう。 + +このような条件下であっても、あなたのWebサイトが確実に読めるようにするため、テキストと背景で十分な色のコントラストがあることを確認することは重要です。 + +
+ + 図1.色のコントラストが不十分なテキストの表示例 LookZook提供 + +
オレンジとグレー4色のボックスに白いテキストがあり、2列に並んでいます。左の列は、色の薄い、#FCA469と書かれたオレンジ色の背景色があります。右の列は、推奨と表示されており、オレンジ色の背景色に#F56905と書かれています。各列の上のボックスには白いテキスト#FFFFFFにオレンジ色の背景で、下のボックスは灰色の背景に白いテキスト#FFFFFFとなっています。灰色の背景は、オレンジ色をグレースケールにしたものです。LookZook提供。
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図1.色のコントラストが不十分なテキストの表示例 LookZook提供
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+ +すべてのテキストに十分な色のコントラストが適用されているサイトは22.04%のみでした。これは言い換えると、5つのサイトのうち4つは背景に溶け込んで読みにくいテキストを持っていると言うことです。 + + + +### ズーミングとページのスケーリング + +[読みやすいフォントサイズ](https://accessibleweb.com/question-answer/minimum-font-size/)や[ターゲットサイズ](https://www.w3.org/WAI/WCAG21/quickref/#target-size)を使うことで、ユーザーがWebサイトを読んだり操作するのを手助けできます。しかし、このガイドラインに対して完全に準拠しているWebサイトですら、訪問者一人ひとりの特定のニーズを満たすことはできません。これがピンチズームやスケーリングなどのデバイスによる機能が非常に重要となる理由です。ユーザーが貴方のページを微調整できるようにして彼らのニーズを満たします。また、小さなフォントやボタンが使われて操作が非常に難しいサイトであっても、ユーザーにそのサイトを使う機会を与えることができます。 + +まれですが、スケーリングの無効化が許容される場合はあります。それは問題となるページがタッチコントロールを使ったWebベースのゲームなどの場合です。このような場合、有効にしてしまうとプレイヤーがゲームで2回タップをするたびにプレイヤーのスマホがズームインやズームアウトしてしまい、皮肉なことに操作できなくなってしまいます。 + +なので、開発者は[メタビューポートタグ](https://developer.mozilla.org/ja/docs/Mobile/Viewport_meta_tag)で次の2つのプロパティのどちらかを設定することで、この機能を無効化できます。 + +1. `user-scalable`を`0`か`no`に設定 + +2. `maximum-scale`を`1`もしくは`1.0`などに設定 + +悲しいことに、開発者はこの機能を誤用しすぎており、モバイルサイトの3つのうち1つ(32.21%)でこの機能を無効化しています。さらにApple(iOS 10の時点)でWeb開発者がズームを無効化できなくなってしまいました。モバイルSafariは純粋に[タグを無視します](https://archive.org/details/ios-10-beta-release-notes)。すべてのサイトは新しいiOSデバイスでズームとスケーリングができます。 + +
+ + 図2. ズームとスケーリングを無効にしているサイトとデバイスの種類の割合。 + +
20刻みの0から80までの垂直測定パーセンテージデータ。デバイスタイプをデスクトップとモバイルでグループ化しています。デスクトップで有効なのは 75.46%無効が24.54%、モバイルで有効なのは67.79%無効が32.21%.
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図2. ズームとスケーリングを無効にしているサイトとデバイスの種類の割合。
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+ +### 言語の識別 + +Webには驚くべき大量のコンテンツが溢れていますが、ここには大きな落とし穴があります。世界には1,000以上の異なる言語が存在しており、探しているコンテンツが流暢な言葉で書かれていない可能性があります。昨今、私たちは翻訳技術で大きな進歩を遂げており、貴方はおそらくその1つをWebで利用しているでしょう(例:Google翻訳) + +この機能を円滑に行うために、翻訳エンジンはあなたのページがどの言語で書かれているかを知る必要があります。これには[`lang`属性](https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/HTML/Global_attributes/lang)が使われます。lang属性がないと、コンピューターはページが記述されている言語を推測する必要が出てきます。想像できると思いますが、ページ中で複数の言語が使われている場合、これは多くの間違いを引き起こします(たとえば、ページナビゲーションは英語なのに投稿されているコンテンツが日本語のような場合)。 + +この言語が指定されていない場合の問題は、規定のユーザー言語でテキストを読む傾向があるスクリーンリーダーのようなテキスト読み上げ支援技術で顕著になります。 + +分析の結果、26.13%で`lang`属性による言語指定がありませんでした。これは4分の1以上のページが上記のような問題の影響を受けやすいという事です。良いニュース? `lang`属性を使っているサイトの99.68%で有効な言語コードが適用されています。 + +### 煩わしいコンテンツ + +認知障害などの一部のユーザーは、1つの作業に対して長時間集中することが困難です。こういったユーザーは、とくに表面的なエフェクトが多く、それが目の前の作業に関わらない場合、動きやアニメーションが多く含まれるページを利用したくありません。 + +残念なことに、私達の調査結果では無限ループアニメーションがWebでは非常に一般的であり、21.04%のページが無限CSSアニメーションや[``](https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/HTML/Element/marquee)および[``](https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/HTML/Element/blink)要素が使われている事を示しています。 + +ただし、この問題の大部分は人気のあるサードパーティー製のスタイルシートが規定で無限ループのCSSアニメーションが含まれている事が原因であることに注意してください。このようなアニメーションスタイルを実際に適用したページ数がいくつあるのか、私達は特定できませんでした。 + +## Web上のメディア + +### 画像の代替テキスト + +画像はWebの体験の根幹です。それらは強い物語性を伝えることができ、注意を引いて感情を引き出すことができます。しかし、ストーリーの一部を伝えるために私達が頼っている画像は、誰でも見ることができるわけではありません。幸いなことに、1995年、HTML 2.0でこの問題に対する解決策が提供されました、それは[alt属性](https://webaim.org/techniques/alttext/)です。alt属性は使われている画像にテキストの説明を追加できる機能をWeb開発者に提供します。これによって、画像を見ることができない(もしくは読み込めない)ときに、altテキストに書かれた説明を読むことができます。altテキストは、彼らが見逃していたかもしれないストーリーの一部を埋めることができます。 + +alt属性は25年前から存在していますが、49.91%のページで画像の一部にalt属性が提供されておらず、8.68%のページでまったく使用されていませんでした。 + +### ビデオやオーディオの字幕 + +画像が強力なストーリーテラーであるように、オーディオとビデオも注目を集めたりアイデアを表現する事ができます。オーディオやビデオコンテンツに字幕が付けられていない場合、コンテンツが聞こえないユーザーはWebのほとんどを見逃してしてしまいます。耳が聞こえない、もしくは難聴のユーザーから一番よく聞くのは、すべてのオーディオとビデオコンテンツに字幕を含めて欲しいというお話です。 + +[`