Replace with Kanji Japanese input method for IBus
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日本語 漢字置換インプット メソッド for IBus

漢字置換インプット メソッドは、FedoraやUbuntuなどIBusに対応したオペレーティング システムで日本語を入力するためのインプット メソッドです。漢字置換インプット メソッドは、約1,500行(v0.5.0)のプログラムで、すべてプログラミング言語Pythonで記述されています。

漢字置換インプット メソッドについて

漢字置換インプット メソッドでは、タイプしたひらがなはタイプライターのように本文中にそのまま直接入力されていきます。ひらがなを入力するために、〔確定〕キーや〔無変換〕キーなどをおす必要はありません。

漢字やカタカナのまじった「しろうとむけワープロの登場を期待したいですね。」(梅棹さん,2015)という文を入力したいときは、つぎのようにタイプします。

しろうとむけわーぷろ〔変換〕のとうじょう〔変換〕をきたい〔変換〕したいですね。

このようにカタカナや漢字にしたい部分の直後で〔変換〕キーをおすと、ひらがなからカタカナや漢字に置換できます。ひらがなで文を最後まで入力したあとで、カーソルをまえにもどして〔変換〕キーをおしてもかまいません。

※ 文節を意識して変換する必要がないので、文節という概念をまだならわない小学生にも、つかいやすい方式になっています。

梅棹式表記

梅棹忠夫さん(1920-2010)は、同音異義語のような目のことばをさけて、耳できいただけで意味がわかるような、わかりやすい日本語を著述のなかでつかわれていました。その表記法は「梅棹式」とよばれることがあります。梅棹式表記法の原則(梅棹さん,2004)は、つぎの2つです。

  • 和語はかなでかく。1音の動詞で意味が判別しにくいときは、漢字の使用も許容する(例:切る、着る)。
  • 漢語は漢字でかく。固有名詞のほかは、常用漢字を意識してむずかしい漢字はさける。

漢字置換インプット メソッドは、 この「梅棹式」で日本語を入力しやすいように開発をすすめてきた日本語インプット メソッドです。付属している辞書も梅棹式表記にあわせて、使用する漢字は固有名詞をのぞくと常用漢字とその音訓の範囲に限定してあります。

※ このREADMEファイルも、漢字置換インプット メソッドをつかって梅棹式表記でかかれています。

インストール方法

漢字置換インプット メソッドは、リリース版はrpmパッケージ(Fedora用)あるいはdebパッケージ(Ubuntu用)からインストールしたり、下記の手順でソースコードからもインストールできます。

./autogen.sh
make
sudo make install
ibus restart

インストールができたら、IBus Preferencesの"Input Method"タブから、

アイコン Japanese - ReplaceWithKanji

を選択してください。

※ ソースコードからビルド時は、Python3とIBusのほかに、Fedoraではibus-develが、Ubuntuではlibibus-1.0-devなどが必要になります。

$ sudo dnf install ibus-devel # Fedoraの場合
$ sudo apt-get install libibus-1.0-dev # Ubuntuの場合

キー操作

キーの操作は下記のようになっています。なお、漢字置換インプット メソッドでは、 誤変換はテキスト エディターやワープロのUndo機能をつかって、もとのひらがなまでもどすことができます(モードレス方式)。

キー 内容
〔Caps Lock〕 英数/かなモードのきりかえ
〔変換〕(JISキーボードの場合)
〔スペース〕(USキーボードの場合)
置換変換開始,次候補
〔↓〕 次候補
〔無変換〕(JISキーボードの場合)
〔Shift〕-〔スペース〕(USキーボードの場合)
〔↑〕
前候補
〔Tab〕 よみを短縮する(下記参照)
〔Enter〕 同音異義語の確定(つづきを入力すれば〔Enter〕をおさなくても自動的に確定します)
〔Esc〕 同音異義語の選択とりけし(ひらがなにもどす)
入力しかけのローマ字のとりけし
〔Page Up〕,〔Page Down〕 同音異義語ウィンドウのページのきりかえ
〔カタカナ〕(JISキーボードの場合)
右〔Shift〕(英語キーボードの場合)
カタカナ置換(カーソルのてまえのひらがなを前方にむかって1文字ずつカタカナに置換していきます)
〔Alt〕-〔カタカナ〕(JISキーボードの場合)
〔Alt〕-右〔Shift〕(英語キーボードの場合)
カタカナ/ひらがなモードのきりかえ
左〔Shift〕 おくりがなの位置を指定
  • 同音異義語ウィンドウは置換候補が複数ある場合にだけ表示されます。
  • 同音異義語ウィンドウから候補を選択するときに、数字キーには対応していません(数字をうつと、そのまま数字が入力されます)。
  • 辞書に登録のないカタカナ語は、カタカナ置換をつかうか、カタカナ入力モードにきりかえて入力します。
  • 辞書の学習結果は、~/.local/share/ibus-replace-with-kanji/ディレクトリの中に保存されます。

よみの短縮

漢字置換インプット メソッドでは、〔変換〕キーをおすと、そのときのカーソル位置の直前のひらがなの文字列が、漢字やカタカナに置換されます。そのとき、辞書ファイルの中からは、よみが一致する一番よみのながい単語がえらばれます。そのため「生きがい論」と入力したい場合、

生きがいろん〔変換〕

とタイプすると、よみとして「がいろん」がえらばれて、

生き概論

のようになります。そこで〔Tab〕をおすと、よみが「いろん」に短縮されて、

生きが異論

とかわります。さらに、もう1度、〔Tab〕をおすと、よみが「ろん」に短縮されて、

生きがい論

と目的の「生きがい論」に置換できます。

※ よみの短縮結果も辞書の学習結果と同様に保存されます。

和語の動詞や用言の漢字での入力方法

和語の1音の動詞の漢字

漢字置換インプット メソッドでは、「切る」と「着る」のように、1音で意味が判別しにくい動詞は、キーボードから直接漢字を入力することができるようにしてあります(漢直方式) 。

直接入力できる漢字は、下記の表のA,B,C列の漢字です。

A B C かな優先
射 \i 生 \xi (入)
売 \u (得)
得 \e (獲)
負 \o 織 \xo (追),(折)
買 \ka 飼 \ga 欠 \xka ,く (書)
着 \ki 切 \gi
裁 \ta (断)
解 \to 説 \do
似 \ni 煮 \xni
\ ¥ \ \

ローマ字入力の場合は表のように、〔\〕キー を前置キーとして、

  • \ki → 着
  • \gi → 切

のようにタイプすると、対応する漢字を直接入力できます。

かな入力の場合、 A,B,C列の漢字は、〔\〕キー もしくは〔半角/全角〕キーにつづけて、それぞれつぎのようにタイプして入力します。

  • A列 音のまま、かなをタイプ
  • B列 音とおなじキーのシフト側(Aがシフト側ならノーマル側)をタイプ
  • C列 表のかなをタイプ

たとえば、動詞の音が「き」であれば、

  • \ き → 着
  • \ 〔Shift〕-き → 切

のように漢字を直接入力できます。

補足: これらの動詞は、よみから漢字に変換する方法では、誤変換になりやすいようです。梅棹式表記では、「生む」と「産む」ようにもともとの和語がおなじものは、漢字でかきわけずに、そのままひらがなで「うむ」とかきます。そのため、こうした意味の判別しにくい1音の動詞はそれほどおおくなく、上記の表のような漢字に限定されるようです。

そのほかの和語の用言の漢字

そのほかの和語の用言も漢字でかきたい場面がまったくないわけではありません。そういった場合は、おくりがなをおくりたい位置で左〔Shift〕キーをおすと、文中にハイフン(―)が入力されます。そのあとで、必要なおくりがなをタイプしてから〔変換〕キーをおすと、漢字に置換することができます。

例)

おく―〔変換〕 → 送,贈,後,遅
おく―る〔変換〕 → 送る,贈る

この例のように、おくりがなをふくめて変換すると、表示される候補の数をしぼることができます。

※ 左〔Shift〕キーはおくりがなをおくる位置でおします。標準の辞書(restrained.dic)では、変換できるのは、『送り仮名の付け方』の原則にそっている場合だけになります。辞書にrestrained.9.dicを指定している場合は、許容されているおくりがなのおくりかたでも変換できるようになります。

例)

お―とす〔変換〕 → 落とす
おと―す〔変換〕 → 落す (restrained.9.dicなら変換可)

キーボード配列の選択

下記のキーボード配列に対応しています。ファイル名に.109がふくまれているものは、JISキーボード用です。設定はJSONで記述しています。通常のテキスト エディターをつかってあたらしい配列を定義してつかうこともできます。

キーボード配列 設定ファイル名 補足
99式ローマ字 roomazi.json
roomazi.109.json
デフォルト。99式ローマ字は梅棹忠夫さんが会長をつとめられた日本ローマ字会でさだめられた方式です。基本部分は訓令式とおなじです。
ニュー スティックニー配列 new_stickney.json まだローマ字の習得がむずかしい小学生にもおぼえやすいような、かな配列として研究中の配列です。
JISかな配列 jis.109.json

設定を変更するときは、IBus configの、

engine/replace-with-kanji-python:layout

に上記の設定ファイル名をフルパス名で指定してください。

例 (インストール先が /usr/local の場合) :

/usr/local/share/ibus-replace-with-kanji/layouts/roomazi.json

IBus configの設定は、dconf Editorをつかう場合は、

/desktop/ibus

から変更できます。設定を変更すると、自動的に漢字置換インプット メソッドに反映されます。

漢数字の入力

キーボード配列として「99式ローマ字」もしくは「ニュー スティックニー配列」を選択しているばあいは、〔\〕キーのあとに数字キーをおすと漢数字を入力できます。例:

  • \1 → 一
  • \2 → 二

辞書ファイルについて

個人用辞書

標準の辞書ファイルにない単語をよくつかう場合は、~/.local/share/ibus-replace-with-kanji/ディレクトリの中の'my.dic'という名前のファイルに単語を追加してください。追加した単語は、次回IBusデーモンを起動したときから、つかえるようになります。IBusデーモンは、コマンド ラインからは、

ibus restart

で再起動できます。辞書ファイルには、以下のようなテキスト形式で単語を保存します。

; コメント
; よみ /単語/
きれい /綺麗/
; よみ /単語1/単語2/
こーひー /珈琲/咖啡/
; 用言のよみは、おくりがなの手前まで指定してハイフンでとめます。
; 漢字は、5段活用動詞は、最後にkgstnbmrwをつけます(kは、カ行をしめします)。
; 形容詞は、最後にiをつけます。
ささや― /囁k/
あお― /碧i/

システム辞書

下記の漢字辞書ファイルをあらかじめ用意しています。

設定ファイル名 説明
restrained.dic デフォルト。常用漢字を基本に構成した辞書です。
restrained.1.dic 小学校1年生用。
restrained.2.dic 小学校2年生用。
restrained.3.dic 小学校3年生用。
restrained.4.dic 小学校4年生用。
restrained.5.dic 小学校5年生用。
restrained.6.dic 小学校6年生用。
restrained.7.dic 中学生用。
restrained.9.dic 許容されているおくりがなをつかうための辞書です。

※ 小中学生用辞書では、使用する漢字とそのよみを、平成29年の『音訓の小・中・高等学校段階別割り振り表』にそって限定してあります。

設定を変更するときは、IBus configの、

engine/replace-with-kanji-python:dictionary

に上記の設定ファイル名をフルパス名で指定してください。

例 (インストール先が /usr/local の場合) :

/usr/local/share/ibus-replace-with-kanji/restrained.dic

制限事項

  • 置換変換はIBusの周辺テキストAPIをつかって実現しています。周辺テキストAPIに未対応あるいは完全には対応できていないアプリケーションでは、直前に入力した文字列にたいしてのみ置換変換をすることができます(カーソルを移動してあとから置換変換することはできなくなります)。GNOMEの標準のテキスト エディターgeditなどは周辺テキストAPIにきちんと対応しているようです。

参考文献