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Japan's Handicapped Junior High School Students

A fictional story written in Japanese.

健常マンと科学部の姫

あらすじ 脳性麻痺と知的障害に苦しむ中学生オッタケは、オキシトシンを服用すると《健常マン》に変身。科学部の姫は健常マンを操り、ある時は正義のため、またある時は私利私欲のために戦う。すべてが最悪な学園バイオレンス・アクション。

1

清中科学部のイカれたメンバーを紹介するよ!!!

いっつもスマホでゲームしてるオタク。いっつもスマホでまとめサイト見てるオタク。先天的に脳性麻痺と知的障害があるオッタケ。そして、中学校の科学部の姫ことオボカタだよ。

痛くてすみません。最後に出てきた姫が私です。このまえヤフーニュース見てたら、境界性人格障害っていうのに特徴が全部一致しました。障害者です。手帳ください。そしたら竹橋の科学技術館にタダで入れる。(科学部部長らしい発言。)

オッタケは足引きずってるけどぎりぎり歩けるよ。言葉はしゃべれないけど勉強は意外とできるよ。クラスで下から2番目くらい。障害者に負ける奴がいるのがどうかしてると思うけどね。あと顔面神経麻痺なので顔はめっちゃキモい。

清中ってのは墨田区立清澄中学校ね。都会の学校だから校庭は狭いよ。あと、フリップフラッパーズの最終回に出てくるダサい方の校舎がめっちゃ似てて笑った。制服もフリップフラッパーズの最終回のダサい方だと思ってください。

オタサーの姫っていったらバンドマンと付き合ってるイメージですよね。でもこのまえライブハウスで大学生くらいのバンドマンに声かけたらハエみたいに追い払われたけどね。しょうがないから部のオタクに過剰なスキンシップするよ。思わせぶりな態度取るよ。でも中学生だと男子はまだ精通してないとかあるよね。あいつらスマホしかやってないし精液ないのかも。

2

部室で遅くまでダラダラしてたら女の子の悲鳴が聞こえた。こんなこともあろうかと、IoTセキュリティ・アラート・システム、起動! 説明しよう。これは学校が設置している防犯カメラの映像なのだが、なぜか科学部のパソコンで見ることができるのだ。IoTすごい。

体育館の方面が怪しい。卓球部が大事な大会が近いとかで、女子部員とコーチがマンツーマンで特訓していたのだ。一体何の特訓なのか? 卓球部員の貞操が危ない! (直球で言った。)

清中科学部、現場に急行せよ。オッタケをくるくる回る椅子に乗っけて廊下を全力疾走。オッタケがビッコ引くのを待ってたら卓球部員がDFEになってしまう。

体育館では、コーチが顔を血まみれにして倒れていた。腕の長い影のような獣が、女子部員を空中に持ち上げて、首を絞めていた。女子部員はユニフォームが引きちぎられ、下着があらわになっている。

よし、オッタケ、健常マンに変身だ。私はポケットから白い粉を取り出した。オッタケは嫌がっている。いいから口を開けろ。オッタケの口に大量の白い粉を流し込む。粉の正体はオキシトシン。科学部だからオキシトシンを合成することができる。ちなみに、ベンゼンとシアンとヒ素を核融合するとオキシトシンになります。

オッタケにオキシトシンを投与すると健常マンに変身する。体操選手のような無駄のない肉体。卓越した身体能力。そして、オキシトシンを投与した者には絶対に逆らわない素直な心。

健常マンは服を脱ぎ、パンツ一丁になって、腕の長い影のような獣 (腕だけでなく名前も長い!) に向かっていった。

健常マンは獣に殴る蹴るの攻撃を加えた。獣が呻き苦しむほどに、健常マンの股間は怒張していく。そして、獣が倒れ、完全に動かなくなると、健常マンの唯一の衣服が破れ、力士が塩を撒くように精液を撒き散らした。

健常マンは射精すると元のオッタケに戻る。オッタケの丸刈りの頭は、精液でベタベタだ。

3

人格障害だから友達いないと思ったでしょ。実際いないわけですが。でも二人一組になる相手くらい必要ですよね。クミコちゃんっていいます。母親が男に捨てられて、家庭環境はお察しです。

ところで、影のような獣シリーズ、そこそこ流行ってるみたいです。卓球部の次は吹奏楽部。象か牛のような鈍重な獣が現れて、楽器をめちゃくちゃにしていきました。部員も何人か怪我したみたいです。

クミコちゃんも吹奏楽部で、楽器を買い直さないといけない。でも、お金がないから、援交でなんとかするんだって。私たちは「買われた」展みたいだね。ヤフーニュースで見た。

だから、もっといいバイトがあるって教えてあげた。科学部で合成したオキシトシンを売ると、じつはけっこうな金になる。合成は簡単だけど、それなりに効くからよく売れる。錦糸公園は私服警官が怖いから、いまの流行は亀戸中央公園と横網町公園だよ。

大切な友達だから、薬の代金は取らない。ただ、ここだけの話、吹奏楽部の内部事情に通じてる人と繋がっておきたい、みたいなのもあるんだよね。

4

IoTセキュリティ・アラート・システム発動! 科学部に警報音が鳴り響く。清中科学部、現場に急行せよ! ガラガラガラ。(オッタケを椅子に乗せて廊下を全力疾走する音。)

美術部にはノボル先生とクミコがいた。クミコは泣いてたけど、拳は硬く握られていた。オッタケにオキシトシンを投与。健常マン、ノボル先生を死なない程度に痛めつけて!

健常マンは喋れないので、私が先生と《交渉》する。

「ではノボル先生、クミコさんに援交を持ちかけたのはノボル先生ということでよろしいですね? さらに、クミコさんが楽器代を用意してきたら、先生がパートの交代を指示して、さらに別の楽器代が必要になるようにした。そして再び援交を持ちかけた。よろしいですね?」

ビシッ、バシッ。

「ハイかイイエで答えてください。」

ボコッ、バキッ。ノボル先生の答えは「ハイ」だ。

「ありがとう。このまま公表したらクミコさんがかわいそうなので、このことは黙っててあげます。そのかわり、この紙に書いてあることを、一字一句、先生の字で書き写してください。」

その内容は以下の通り: ノボル先生がクミコと二人で練習していたとき、クミコの態度に腹を立てて、楽器を投げつけて壊した。そこに他の部員も入ってきたので、口止めのために殴って怪我をさせた。

影のような獣を見てる人もたくさんいるけど、この方がみんな信じると思う。

吹奏楽部の顧問がノボル先生に代わってから、土日も放課後も休みなし、水を飲むと怒られるようなブラック部活になった。それで演奏は上手くなったから、何かの大会の予選を突破したらしい。もしこのまま優勝などしようものなら、吹奏楽部の予算が増えて、科学部に皺寄せが来るのは必至というワケ。

原本は校長に、コピーは教育委員会にでも送りつけようかな。完璧だね。と、その時、私が命令してないのに、健常マンが先生を殴り始めた。今にも先生を殺しそうな勢い。

「待って、待って、殴らないで、特に顔はダメ!!」

緊急事態発生。健常マンが私の命令を聞かない。さっき先生を殴るとき手加減したから欲求不満になったみたい。

健常マンのパンツが破け、怒張した物体があらわになった。

健常マンはクミコを押し倒し、服を破いた。でっかいチンコがちっちゃいマンコに突き刺さる。射精が終わると、クミコの陰裂から、紅白の液体が流れ出た。二人の初めての共同作業だ。

5

私はみそか。御苑みそか先輩。

美術準備室に住み着いた、たった一人の美術部員。家には寝に帰るだけ。明かりをつけていると先生に怒られるから、暗闇で絵を描くことに慣れてしまった。

このまま視力を失えば、盲目の画家として有名になれるかもしれない。でも、そのとき私を話題にする人たちが、私の絵を見る眼を持っているでしょうか?

6

渡り廊下に巨大な絵が飾ってある。この学校は区立だから、どういう名目で買ったのか分からない。その点も含めて、この絵は何もかもがダメだ。

そんな絵を熱心に見ている子がいた。たしか科学部の千代田まどかだ。部内ではオボカタと呼ばせてるらしい。この絵のいったいどこがいいのか、興味がある。

「どう思う?」

「どうって……つまらない絵ですね。でも」

「でも?」

「いいえ、何でもないです。それより、御苑みそか先輩、ですよね。この御苑斗司夫って、何か関係あるんですか?」

「関係ない。この絵も嫌い。」

この子が絵を褒めなくて本当に良かった。私はこの子に興味がある。

「ねえ、美術室に来ない?」

7

お湯を沸かし、ティーバッグの紅茶をいれる。リプトンは三角形だし、日東より香りがいい。オボカタさんは私の絵を見て、ひどく驚いていた。

「これ、何に見える?」

「腕の長い、影のような、獣……」

「そう、ありがとう。題をつけるのもつけられるのも嫌いなんだ。でも、あなたの題は好き。」

ああ、本当に、この子に声をかけてよかった。

「あなたはこれを見たの?」

「はい、卓球部を襲っているところを。私とオッタケが倒しました。……先輩は、何を知っているんですか? この絵は、この怪物は、何なんですか?」

「私は存在するものを描くだけ。ただ、私が描くと、ほかの人にも見えるようになることがある。」

思春期だからかな。こういうものが見えるようになる子がたまにいる。でも大丈夫。すぐに見えなくなるよ。あちら側に、完全に行ってしまわない限りは。

8

学校の図書室に代表的な美術雑誌がいくつか入る。美術準備室でなければ、私はだいたいそこにいる。ある美術雑誌を見ていたら、あまりによく出来た喜劇があったので、吹き出してしまった。

さっそくヒラノに電話した。ほどなくしてヒラノが美術準備室にやって来た。養護教諭は部屋の外に立っている。

御苑斗司夫は日本美術教育協会の会長で、ヒラノは理事だ。ヒラノは墨田区の教育委員会にも食い込んでいるので、私が通う清澄中学校にも様子を見に来てくれる。

私の顔を見るなり、ヒラノは床に手をついて詫びた。私はヒラノと目の高さを同じにして、別に気にしていないと告げた。それよりも、そこにあるお菓子を早く開けてほしいと。

お菓子は駅の売店で買えるもので、紅茶はリプトンだけど、出来事があまりにも愉快なので、とても美味しく感じられる。顛末を説明すると、私は絵を描くとき、同じ枚数だけ絵を捨てることにしている。そうでないと世界の恒常性を保てないからだ。ヒラノは、その中から気に入った絵を持って行くことがある。あるとき、ヒラノが持っていた絵をトシオが見て、ヒラノはトシオに私の絵を渡した。それがなぜか、東京都主催のコンテストでトシオの名前で大賞に選ばれている。どうせ東京都と協会は裏で繋がってるんだろうけど、トシオがそんな泥棒みたいな賞を取ったのは本当に愉快だ。

美術雑誌を開いてヒラノに見せていると、愉快な時間は唐突に終わりを告げた。私の絵には御苑斗司夫の名前が書き加えられている。 私の絵に文字を乗せてはいけない。 ヒラノは私が何を問題にしているか分かっていないだろう。でも、私はそれを言わなければならない。

世界は言語によって分節される。私の絵は言語によって分節される以前で、だから、その手前に文字が置かれると、私はその世界から永遠に分離されてしまう。

私はこの通りのことを話した。ヒラノが分かってくれるまで、何度でも同じことを繰り返す。養護教諭が私を落ち着かせようとしている。ヒラノは一礼して退出する。ヒラノは私のこのような姿を何度も見ているのに、「お嬢様」と慕ってくれる。

トシオは私の母を棄てた。御苑ミミは、措置入院で、閉鎖病棟に入れられた。私はそこで生まれた。閉鎖病棟は、母の世界のすべて。私が母と一緒に居られた唯一の場所。そして、私が帰るべき唯一の場所。あの場所に、御苑ミミのいる病室に、帰りたい。

「先輩、いまの人、教育委員会の……」

ああ、かわいそうなまどか。どうしてあなたは、そんなことにまで首を突っ込んで来るのか。私はまどかの手を取って、あちら側に飛んだ。

9

私だよ。先輩が完全に発狂したので、一人称に戻ったよ。でも、ここは完全にヤバい。記述不可能な何かしか見えない。

ああ、でも、オタクたちが何かしようとしてるのは見える。オタクAはパソコンでググってる。オタクBは何か計算してる。でも、このタイミングで「シアン」とか「ベンゼン」でググってるのは遅いよ。それググっても移転問題のニュースしか出ないよ。

初めてオキシトシンを合成したときのことを思い出した。あのときは何度も失敗した。私はオキシトシンを合成するの上手くなったけど、オタクたちは下手クソなままだった。オッタケがノートに中間体の英語名を書いた。オタクAはそれをググって、正解にたどり着いた。さらにオッタケが構造式を書くと、オタクBは炭素の数を数えて分子量を計算してる。オッタケ、ナイスフォロー!

あとは化学反応を待つだけというとき、影のような何か、略して「かれら」がオタクたちに襲い掛かった。科学部心得第1条! ヘルメットの紐をしっかり締める。第2条! ゲバ棒はプラカードに加工すれば凶器準備集合罪に問われない。(問われることもある。)

オタクたちは「かれら」をゲバ棒で追い返した。オキシトシンの合成が完了。オッタケに投与。健常マンに変身。健常マンは私を記述不可能な世界から救い出した。私は科学部の部室に戻ってきた!

まさかこれが役に立つ時が来るとはな。オタクをビリビリする機械。なぜこんな物を作ったかって? 楽しいから♡ ちょー楽しいから♡ あと、筑波大学のAC入試が有利になるかもしれない。

健常マンは右手にワニ口クリップ、左手にみのむしクリップを持ってミソノ先輩に突進した。アイ・ハブ・ア・ワニ。アイ・ハブ・ア・ミノムシ。ウー。アイ・ハブ・ア・ドリーム!

ワニとミノムシがミソノ先輩の両耳に噛み付いた。今だ。コッククロフト・ウォルトン回路、起動! 600万エレクトロンボルトの超高圧の電磁パルスが、ミソノ先輩のニューロンを、神経電位を、粉砕する!

10

ミソノ先輩が倒れている。呼吸と脈拍は無事だ。健常マンはオッタケに戻った。記述不可能なものも、影のようなものも、すべて消えている。

私たちは美術準備室にいた。オッタケはウーウーと呻きながら、ミソノ先輩の絵に手を伸ばした。オッタケの目尻に光るものが見えた。オッタケの涙なんて初めて見たよ。

「よかったな、オッタケ。やっぱキチガイはキチガイが理解るんだよ。」

私が適当なことを言っていると、ミソノ先輩が目を醒ました。ミソノ先輩はオッタケの丸刈り頭を抱き寄せる。

「この絵が好きなの? ありがとう! 私もあなたが好き。」

オッタケも精液まみれの手でミソノ先輩の髪を撫でる。何この状況? よく分からないけど、私も負けてられない!!

「私も、先輩の絵、好きです!!!」

11

都と協会で話がついて、あの受賞はなかったことになったらしい。トシオは会長を退いて、ヒラノが会長に、私には理事の椅子が回ってきた。

トシオは前頭側頭型認知症と診断されて、即日入院となった。世にいう老害のかなりの割合がこれなのではと疑っている。

入れ違いに母は退院した。たまにコンビニ店員とトラブルになることもあるけど、それなりに社会に包摂されている。

まどかは相変わらずオタクにスキンシップしてる。たまに私と百合営業する。科学部の男子がリットル単位で紅茶を消費するので、粉のレモンティーを導入した。

私はあちら側の世界が見えなくなった。ただ、まどかと手をつないだときだけ、私たちは飛ぶことができる。