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岩波文庫

『岩波文庫解説総目録』に合わせて,ISBN-13の先頭の978400と末尾の1桁,ISBN10の先頭の400と末尾の1桁は割愛している。

概要

ファイル名 重要度 ISBN 補足
isbnWithNicds.md 使い回し 1個のISBNに複数のNCIDが対応する,つまりISBNは同じだがCiNii Booksでは区別されているものを,機械的に抽出した結果
isbnWithNicds2.md 使い回し isbnWithNicds.mdのうち,著者や訳者の変更があったもの
isbnWithNicds3.md 使い回し isbnWithNicds.md(機械的抽出)には載っていて,isbnWithNicds2.md(深刻なもの)には載っていない,ISBNの使い回しが許容されるかもしれないもの(内容が大きく変更されている可能性はある)
titleWithIsbns.md 変更 原書は同じだが,改版に伴って訳者が変わったり解説が追加されたりして,ISBNが変わったもの。常識的には変わって当然だが,岩波文庫では例外的
itemWithoutIsbn.md なし CiNii Booksに登録されている岩波文庫タイトルで,ISBNがないもの(機械的抽出)

NCIDはCiNii BooksのID

補足

シリーズものの場合は第1巻のみを調べている。この方針の欠点はいかのとおり。

isbnWithNicds2.mdに掲載されているものが深刻だということには,同意する人が多いと思う。isbnWithNicds3.mdに掲載されているもの(下に例を挙げる)が深刻ではないということには,疑問を感じる人が多いかもしれない。

  • 訳者あとがきが追加された場合(例:『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』の1998版1999版 2003版

その他

  • 『新島襄書簡集』 https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB08863996https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN0868403X は同じに見えるが,CiNiiによると,前者は非売品とのこと。
  • titleWithIsbns.mdのうち,『インディアスの破壊についての簡潔な報告』には訳者解説の追加,『テアイテトス』には底本の変更および補註の追加,『歌行灯』と『青年』には解説者の変更,『桜の実の熟する時』と『田舎教師』には解説者の追加,他のものには訳者の変更があったが,そういう例は上記「深刻な使い回し」にもあるため,ISBN変更の真の理由なのかどうかはわからない。
  • ヒルティ『幸福論』,第一部には1935版(ISBNなし)と1961版(ISBNは336383)があり,訳者はいずれも草間平作(著者・訳者は同じため,isbnWithNicds2.mdには掲載していない)。第二部(1962)と第三部(1965)の訳者は草間平作,大和邦太郎。

岩波文庫の書誌として最も信頼できるのは何か

『岩波文庫解説総目録』(以下,総目録)の新版(90年版 1927~2016)を堪能したので,これに関連した話を書いておこうと思います。

表紙

90年を超える歴史,約6000冊のコレクションを誇る岩波文庫が重要な文庫であることは間違いありません。しかし,その歴史のためか,書誌に関してはいろいろと難しいことがあります(そもそも,6000の数え方がよくわかりません)。次のような問題があります。

  1. ISBNの使い回し
  2. 記録に残らない重版時の内容変更

順番に行きます。

ISBNの使い回し

岩波文庫の書誌に関する問題で,最も有名なのはISBNの使い回しでしょう(Wikipediaにも載っています)。著者や翻訳者が変わっても,ISBNがそのまま使い回されることがあるのです。そのせいで,「オンライン書店で新訳を買ったつもりが旧訳が届いた」などというトラブルも発生するようです。参考:岩波文庫がISBNコードを上書き使用している件について(togetter)

総目録

総目録はこの問題の解決には役立ちません。原書が同じものはまとめられ,ISBNは変わったとしても最新のものしか載っていないからです。たとえば『インディアスの破壊についての簡潔な報告』は,1976年版(ISBNは334271)2013年版(ISBNは358001)があります。訳者が同じなのにISBNが変わった(岩波文庫としては)珍しい例なのですが,総目録に載っているISBNは358001だけなので,総目録だけを見てもISBNが変わったかどうかはわかりません。

CiNii Books

この問題は,CiNii Booksを使って解決するのがよさそうです。CiNii BooksのデータベースはISBNでなくNCIDという独自のIDを振っているので,ISBNとNCIDの組を調べれば,ISBNの使い回しがわかります。(細かいことですが,,CiNii BooksからGoogle BooksへのリンクにはISBNが使われているので,CiNii BooksからGoogle Booksに飛ぶときは注意が必要です。間違っているものが少なくとも60件はあります。)

CiNii BooksのAPIで,岩波文庫(親書誌IDがBN00015783であるもの)を検索し,上記のリストを作りました。

CiNii Booksが最も信頼できる情報源なのかというと,そういうわけではありません。

第1に,このデータベースは大学図書館のデータベースなので,大学図書館が所蔵していないものは登録されていません。第2に,NCIDという独自のIDを振っているとは言っても,ISBNがない時代のものには,かなりの混乱がありそうです。

第2に,CiNii Booksにも間違いはあります。たとえば,同一の書籍に複数のNCIDが振られているものが14件,翻訳者が間違って登録されていたものが1件,ISBNがあるはずなのに登録されていなかったものが1件,タイトルの「他二編」の漢数字「二」がカタカナの「二」になっているものを見つけました。いずれも報告し,修正してもらいましたが,最後のものは発生理由を想像すると闇を覗いた気になります。

国会図書館

CiNiiがダメなら国会図書館はどうかというと,『人間に就いて』が誤って『人間について』として登録されているなど,完璧というわけにはいきません。(本稿執筆時点)

記録に残らない重版時の内容変更

ISBNの問題を別にすれば総目録は完璧なのかというと,そういうわけではありません。

総目録には,「改版」は記録されていますが,「重版」は記録されていません。ふつうはそれでいいのですが,岩波文庫の場合は,重版時に解説が追加されることがあります。これが記録されていないのは困ります。以下の挙げるのは,記録されるべきだと思われるのに記録されていないものです。(*の部分は岩波書店の「愛読者の窓」係に教えてもらいました。ありがとうございました。)

版元でも確認できないものについて,現物を確認できる人がいたら教えていただきたいです。

総目録には細かい間違いもあります。

たとえば,『草の葉』の翻訳者が間違っています。『草の葉』には,1934版1969版1998版があります。手元の総目録初版では,1998版のの翻訳者が「杉木喬, 鍋島能弘, 酒本雅之」になっていますが,岩波書店の「愛読者の窓」係に確認したところ,正しくは「酒本雅之」のみだそうです(CiNii Booksはあっています)。正誤表の公開が待たれます。

ウェブサイトは直っていますが,こちらには,1969版の情報が出てこないという問題があります。

表紙

また,1969版の翻訳者が,総目録では「杉木喬, 鍋島能弘, 酒本雅之」になっていますが,3人訳なのは上巻だけで,中と下の翻訳者は「鍋島能弘, 酒本雅之」だそうです。『岩波文庫の80年』ではそうなっています。CiNii Booksのデータはちょっと違っていて,中の訳者が鍋島能弘,下の訳者が酒本雅之だそうです。

いずれにしても,総目録と『岩波文庫の80年』で統一のデータベースを使っているわけではないようです。『岩波文庫の80年』は単なる年表なので,書誌としては不十分なのですが,それでもとりあえず,『岩波文庫の90年』は出してほしいです。

結論:岩波文庫の書誌として信頼できるものを見つけるのは難しいです。