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スライドにストーリーを

Mark Ward

何回か登壇を繰り返すと、スライドづくりもスムーズにできるようになってくる。ぼくの場合、スライドにストーリーを持たせるという取り組みをやるようになってからスライドの品質も上がり、うれしいことに登壇そのものもやりやすくなった。せっかくなので、そんな驚きの登壇技術をこの本を手に取ってくださった方にもお伝えしたい。

スライドの最初と最後に表紙ページを置く

ストーリーをスライドに持たせるための今日からできるテクニックが、表紙ページをスライドの最初と最後に置くことだ。特に最終ページでは「ご清聴ありがとうございました」の一言を載せるというのをやりがちだが、商談ではないのだからそんなことは口頭で言えば済むわけで、スライドを1ページ費やす価値も意義も存在しない。そんな意味のない情報をスライドに載せても、聞いているオーディエンスたちやSpeakerdeckなどで公開されたスライドを見ているひとたちの時間を奪うだけである。

その点、スライドの表紙を最終ページに置けば、この一連のトークがどんなテーマで話されたものなのかを意識的に思い出すことができる。音楽理論でいう、曲の調ごとの主音を最後に置くことで曲が終わった感じが出る、というのに似ている。あるいは、映画のオープニングの場面とエンディングの場面が同じ情景をベースになっていて、鑑賞しているひとの心情的にちゃんと着地して作品が終わった印象を持つという話もある。このように、まったく畑の違う分野の知見を引っ張ってきて活かすことも、エンジニアとして大切な素質だとぼくは思うが、これもその一例だろう。

LTは3本柱で組み立てる

スライドの最初と最後に表紙ページを置けたら、次に重要なのは本筋だ。登壇時間が長ければそれなりに複雑なストーリーが必要になるが、LTは大抵5分とか、長くても15分程度である。その程度の発表ならば、むしろ「喋りすぎない」ことが大切だ。ストーリーを3本柱で組み立てるのがベーシックかつ強力な方法である。1本柱・2本柱でも、もちろん構わない。ちなみにこの文章は2本柱+まとめという形を採用している。

ここでは、ぼくが先日社内イベントのために作成したLTスライドを引き合いに出してみよう。タイトルは「クセが強すぎるゴルフ漫画『風の大地』」である。社内の漫画好きが集まって交流するイベントで、好きな作品を紹介するという企画のために作成したものだ。

ぼくはこのスライドを以下の3本柱で作成した。

  • クセ1:既刊80巻以上
  • クセ2:ポエムが長い
  • クセ3:トンデモ展開

「クセが強すぎる」という言葉をタイトルに入れているので「クセ」を3本柱に置いてみた。どうだろう、この3本柱だけでも「クセが強すぎる」ことがインパクト強く伝わってくるではないか。

ここまでくれば、ほぼスライドはできたも同然である。それぞれの「クセ」に関する子要素を並べて時間に収まるように喋ればよい。たとえば、「クセ1」については次のように箇条書きにすればよい。

  • 連載開始は1990年
  • おすすめは名言・人間模様が深い12巻まで
  • 気に入ればポエムの筆が乗っていく19巻まで

こう書くと「じゃあ、このポエムってやつなんですが、それが実は次のクセなんですよね」などとつないで「クセ2」の紹介に移ることができる。スライドがむしろカンペとして、登壇者がストーリーを紡いで喋れるようになるのだ。この流れを「クセ1」「クセ2」「クセ3」と続けていく。

そうしたら最終ページの表紙を見せながら「そんなわけで『クセが強すぎるゴルフ漫画『風の大地』』というお話でした。お聞きくださりありがとうございましたー!」などと簡単に締めればよい。表紙が表示されているのだから、登壇者はほとんど文字を読むだけで済む。それでいて、聞き手はストーリーのしっかりした発表を聞くことができたという感想を持ちやすい。業務に直結するような重要なLTであればなおさら印象に残り、明日からの仕事に活かされるだろう。

さぁ、登壇しよう

本稿ではLT初心者から少し慣れてきたかな、くらいのレベルの方に向けて、ストーリーという角度でスライドの作り方を解説した。スライドの最初と最後に表紙ページを置いて着地点を定め、内容は3本柱を立ててそれぞれを連関させることで筋道だったスライドを作成でき、しかも登壇者も発表しやすくなるという構造上の利点を示した。LTでは、むしろ喋りすぎる登壇は敬遠される。話の筋書きが見えず、何を言っているのかさっぱりわからない(けど本人は自慢げな)登壇者の長広舌など、もううんざりだろう。あなたがLTに慣れていようと慣れていまいと、ストーリーを打ち立てることで自信を持って優れたLTができることに、きっと驚くはずである。今すぐにconnpassを開いて、次のLT登壇の予定を立てよう。

Happy Talking.