以前、ギタリストのI氏に「コンピュータから変な音が出ても、すごくも何ともない」と言われ、なるほどと思ったことがある。コンピュータとは計算機であって、楽器ではない。ならばコンピュータにとってのパフォーマンスとは、演奏というよりは演算であろう。本作でのコンピュータは、コントラバスの演奏に応じて、あまり音楽的とは言えない振る舞いを示す(所謂エフェクター的な使用から離れて何ができるか)。しかしながらその振る舞いは、概ね聴いて理解できることが必要である(ブラックボックス化をいかに回避するか)。具体的には、コントラバスの演奏から余韻だけを取り出す、ある基準に従って音を並べ替えるなどの操作を行う。一方、コントラバスのための音楽は、コンピュータのための素材であると同時に、素材の要件を満たした上で独立した楽曲としても成立し得る。主に指板上の経路探索アルゴリズムによって書かれたが、佐藤洋嗣さんの校正により大幅にブラッシュアップされた。
Db, Elec
2017年10月8日、ソノリウム、佐藤洋嗣
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