ryo takahashiです。今年もありがとうございました。
いつも通りでした。と言いたいところですが、今年はアルバムまるっとディレクションするみたいな事が業務として依頼される事が増えた年でした。
もともと同じようなことやってはいたんだけどね。
鈴木真海子『ms』もその一つ。
去年(2020年)の秋終わりくらいから本格的に制作を開始した。
一昨年くらいからミュージシャン集めてセッションしたりデモ送りあったりはしてたけどようやくそろそろ形にするかとなったのがそのくらい。(その時のセッションで作った17曲、アルバムに1曲も入っていません。結局、新規で9曲作った。)
LINEのトーク履歴を見直すと前作Deep greenの全曲ミックスを依頼されたり、一緒に曲順考えたりしてるのが出てくる。
それ以上に、今回は見積もり出しから始まって、要件定義作成、実際の制作、映像企画、ホームページ、グッズ、ライブ、各種デザインの話が大量に出てくる。つまり全て自分たちのコントロール下にある。ストロングピスタチオスタイル。(ストロングピスタチオスタイルについてはこちらにもドキュメントがあります)
鈴木真海子をセルフプロデューサーとして完全に立たせるべく、ディレクションを務めた。
二人で発案して俺が展開。最終の意思決定は100パーセントまみこって感じで進めた。
正直おれのアルバムでもある、と思えるくらいすごく大事なアルバムになった。
なので今年の印象的な仕事として全曲解説しますね。
前情報として全曲おれレコーディング、おれミックスです。
年末で師走りあげておりますが忙しい時ほど不要不急の仕事を見出してしまう。
以下、それです。
一番最初に形にした曲だと思う。アルバム制作の勢い付けになった曲。ドラムマシンの音から打ち込み始めたかな。
鈴木真海子はどんなジャンルをやっても有機的にしたいと思っていたので、ピアノは「リビングの適当なアップライトピアノに適当にマイクを立てて録った」みたいなイメージにした。
ピアノチャンネルに薄っすらambienceな雑音も混ぜてある。リズムマシンも保存環境悪い感じで位相ズラしたりしたな。
これはアルバム通してなんだけど鈴木真海子のアルバムなので彼女の歌がちゃんと聞こえてさえすればトラックはもこもこしてたり変なバランスにしてもいいっていう裏ルールも作ってた。
この曲ではドラムがやや左寄り。2,4拍(スネアのとこ)でレゲエみたいにドロップするベースフレーズが気に入ってる。
まみこがJacob mannにインスタでDMを送って制作を依頼した。
現スペシャの鈴木健さんに翻訳に入ってもらいながら数回のやり取りでサクッとインストトラックが納品された。
俺たちのすきなジェイコブマンそのままの曲で笑った。
本来ならパラデータで納品のお願いをするけど、ジェイコブマンのミックス癖みたいなのを壊したくなくて最低限のステムだけ請求した。上にも書いた裏ルールだけ守ればいいしね。
録音はこの曲だけまみこの家、マイクスタンドのアダプター忘れてガムテープでぐるぐるまきにして録った。
イリとの曲。
前に3人で飲んだ時とかに言ってた事が実行できてよかった。イリと真海子はかなりの頻度で遊ぶ。
「今度遊ぶ時にでも適当にデモ作ってきてよ」と伝えておいたらアコギで弾いた簡単な3コードに二人で歌を載せたやつが届いた。
最初「サーフっぽくして」ときてたけど、前作でrachelを迎えて作ったlilyみたいな意味合いの曲にしたいなと思ったのでlilyのベースラインを引用しながら作っていたらああいう仕上がりになった。
最後の方で「これならサーフっぽいスライドギター入れれそう!」と思って弊スタジオの煙鬼 shinobu achihaに弾いてもらった。これきっかけでラップスティールギターを買ったらしい
これ作ったのは結構終盤。
サウンドクラウドに無数に挙がっているようなラップミュージック。
というかバンドマンが宅録初めてみたけど、歌があんま得意じゃないからラップしました的なカジュアルさ。そういうだらしなさを目指したトラック。
それでも「マニ!」のフック一発でポップに仕上げていくあたりさすがchelmicoの人だ、という感じ。
この曲はインタールード的な立ち位置の曲。
ベースはPAM(ex.ODOLA)がうちに遊びにきた時に弾いてもらったフレーズを無理矢理エディットして作った。
前半はイタリアの郷土料理の名前をインターネットで検索して羅列しているだけ、後半はスキャット。
前半の歌メロを作ったのはCINでもお馴染み四弦力丸。ヨンゲンが家に来た時にちょうどこの曲の作業をしていたので駆けつけワンテイクで録ってもらった。偶然イタリア料理のことを考えていたんでしょう、ほぼ即興でこれを歌っていた。後半はおれがボーカルチョップして作ったメロディを聴感通りにスキャット化した。
4小節ループと3小節ループが混ざっている曲なんだけど、フルバンドでやると全員がやや不安な気持ちで演奏を進行している事が発覚。でも全員でそれが楽しいよな!って話になった。なのでこのままヒヤヒヤしながら演奏し続けたいと思います。
真海子のボイスメモから作った曲。その段階ではちょっとしっとりした雰囲気の曲だった気がする。
そこからインディーズ版トロピカル・ダンディーって感じに編曲。
ギターソロはニューリーに弾いてもらった。これも意味なく遊んだ時に突然弾かせた。アコギのギターソロって香ばしくて最高。ありがとう。
イントロから鳴ってるリズムマシンはまみこ所有のTR-66。かなり状態がよく、そしてよすぎてややつまらんかった。
ライブだとこの「状態のよさ」を活かしてめちゃめちゃ活躍していただいてます。ベースは打ち込みのものを弾き直すか直前まで悩んだけどこのまま行った。
なんか頼りなさというかダサさというか詰めの甘さみたいなのが好きなんだよなー
先にも出た shinobu achihaプロデュース曲。おれがリズムマシンとエレピだけで曲つくって。とオーダーして届いた曲。雑オーダー。
必要最低限の楽器数で一番身近なものについて歌う、アルバム内で一番パーソナルな曲になったように思う。achiha、生涯の楽器演奏時間のほとんどを自身の楽しみの為のみに捧げる男、さすが。おれにはこの曲は作れないなー。
ライブではまみこのRoland TR-66を慣らしているけど、原曲ではAce Tone fr-6(のサンプリング)です。
あとバンドメンバー内に3人いるキーボーディスト全員の頭を抱えさせた変態曲である
頭のパーカッションにいろいろエフェクトかける→電車の音みたい→ダンサーインザダークっぽいな→bjork→アイスランド→ケルト音楽っぽいのやりたいな!!でこうなりました。
と言ってもケルト音楽について知見があるわけでもなく、何となくそれっぽい拍子や楽器を使って作って行った感じ。
自分の制作スタイルとしては基本こんな感じがおおい。
いろんなジャンルを楽器毎やリズム毎、テンポ毎、フレーズ毎などに分解して、共通項を見つけてごちゃごちゃに混ぜてもう一度組み直す。結果、変なトコどりの変な曲ができたなーってなる事が多い、楽しい。
まみこ作詞、作曲、演奏。実際にギターを弾きながら歌って同時に録音した。実はバイクの音とか入ってます。
真海子からのボイスメモから始まった曲 今回のアルバム関連で一番聞いたのはこのボイスメモかもしれない、本当はこのままリリースしたいくらいだった。しないけど
最終的にアンビエントっぽい仕上がりにはしたけど編曲らしい編曲はしてない。
アルバムの中で一番低い周波数まで音が出ている曲なのででっかいクラブの鬼積みウーファーの前で聞いてみたい
マスタリングはFlugel Masteringの山﨑翼さん
依頼内容は下記のような感じ
- ダイナミクス感をできるだけ潰さないようにしたい
- 音圧はそんなに必要ない
- 配信サービスに合わせたくらいのラウドネス設定でいいかも
- 声とトラックが馴染みすぎないようにしたい
- 宅録感、空間感のある感じにしたい
最初っからいい感じの仕上がりでした。空耳だけダンストラックみたいになっていたので(それはそれでかっこいい)、音圧感をだいぶ下げてもらった。
というか空耳のダンスエディットみたいなんも作りたいな。
楽しかった