449.txt

[1] [DFN[天平]]は、[[日本の元号]]の1つです。

* 遡及年号

[SEE[ 他の時代も含む一般的事項は[[遡及年号]] ]]

[SEE[ 養老時代の類似例は[[養老の延長年号]] ]]

[FIG(quote)[
[FIGCAPTION[
[2] [CITE[鎌倉、まぼろしの風景。85]], 
更新日 : 4月26日2012,
[TIME[2012-04-26 00:07:16 +09:00]] <http://kamekokishi.web.fc2.com/stella/yakamochi.html>
]FIGCAPTION]

>この部分は万葉集を読む人たちが皆気にする不思議な部分
でもある。
>右は、養老8年7月7日、令に応ふ。
>と書いてあるのだ。養老8年は2月に神亀へ改元されたので
養老8年7月7日は存在しないのだ。
>さらに
>右は、天平元年7月7日の夜、憶良、天河を仰ぎ観て作れり。
>これも、8月になって天平に改元されたのだから、元年の7月
は存在しないのだ。

]FIG]

* 天平18年閏7月問題


[8] 
[CITE[万葉集]]
巻十七所収の
3927番の歌の[[題詞]]に、
「大伴宿祢家持以天平十八年閏七月被任越中國守、
即取七月赴任所、」
とありました [SRC[>>9]]。
ところが[DFN[天平18年閏7月]]は[[旧暦]]になく、実際には閏9月がありました。
[SRC[>>36 p.四一六]]

[10] 
そうでなくても閏7月に任命され7月に赴任できるはずがなく、
しかも[CITE[続日本紀]]は[[大伴家持]]が[[越中守]]に任じられたのは天平18年6月壬寅としていました。
[SRC[>>36 p.四一六]]

[3] 
この部分は写本間にも相違があり、
書写により誤りが発生したとみて
10種類以上の解釈が提案されてきました
[SRC[>>4]]。


[5] 
なお、他に[CITE[万葉集]]天平時代で
「天平十年戊寅秋八月二十日」
の「二十」が温故堂本で「七」と誤った例が知られています。 [SRC[>>4]]


[REFS[
- [9] [CITE@ja[[[万葉集]]/第十七巻 - Wikisource]], [TIME[2020-02-12 18:30:01 +09:00]] <https://ja.wikisource.org/wiki/%E4%B8%87%E8%91%89%E9%9B%86/%E7%AC%AC%E5%8D%81%E4%B8%83%E5%B7%BB>
- [35] [CITE[[[日本古代史の基礎的研究]]]] 上 文献篇
-- [36] [CITE[万葉集と上代文化]], pp.三八九-四五〇, 初出昭和二十九年十二月
- [4] 
[CITE[家持に贈る歌 ―大伴坂上郎女歌の手法―]],
[[鈴木武晴]],
[TIME[平成三(一九九一)年一月一日][1991-01-01]]稿,
[TIME[2014-03-11 14:59:19 +09:00]] <http://manyoug.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/03/manyo_140.pdf#page=12>

]REFS]

* 1年ずれ

[14] 
[CITE[Wikipedia]]
の[[聖武天皇]]記事の表は[TIME[西暦730年][year:730]]を[[元年]]としていて、
1年ずれています。
[SRC[>>13]]
[[天平]]の記事はずれていないようです。

[REFS[
- [13] [CITE@ja[[[聖武天皇]] - Wikipedia]], [TIME[2020-07-20 04:20:18 +09:00]] <https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%96%E6%AD%A6%E5%A4%A9%E7%9A%87#%E5%9C%A8%E4%BD%8D%E5%B9%B4%E3%81%A8%E8%A5%BF%E6%9A%A6%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E7%85%A7%E8%A1%A8>
]REFS]

* 天平聖曆

[1918] 
[[天平]]を[DFN[天平聖暦]]と書くものがありました。
[SRC[>>1731]]

- [55] 
[CITE[七大寺巡礼私記]] [WEAK[([[平安時代]]末期)]]
の
[CSECTION[東金堂]]
の項に
[CITE[帝王系図]]
から引いて
「[V[天平聖暦元[LINES[己][巳]]]]」
に云々とありました。
[SRC[>>54]]
- [29] 
[CITE[[[二中歴]]]]
[WEAK[([[鎌倉時代]])]]
の
[CITE[史籍集覧]]
本に
「[V[天平󠄃唯二十箇年[LINES[己][巳]][FENCED[(][[LINES[或又󠄂作天平󠄃[ASIS[聖󠄁][耳右下出]](或][本正)曆二十年]]][)]]]]」
とありました。
[SRC[>>28]]
-- [33] 尊経閣文庫本時点で既にこの注釈が付いていたようです [SRC[>>5]]。
-- [31] 出典とされる
[CITE[掌中歴]]
には「[V[天平唯二十箇年]]」とありました。 [SRC[>>30]]
- [51] 
[CITE[宴曲抄]]
[WEAK[([TIME[永仁4(1296)年][1296]]以前成立)]]
「聖武の御宇には、天平聖暦の事かとよ」
[SRC[>>50]]
- [60] [CITE[東寺王代記]]
[WEAK[([TIME[文中3(1374)年][1374]]-[TIME[天授6(1380)年][1380]]頃)]]
「[V[天平󠄃元。[LINES[或天平󠄃正][曆云々。]]]]」
[SRC[>>61]]
- [21] 
[CITE[運歩色葉集]] [WEAK[([TIME[天文17(1548)年][1548]])]]
「天平聖曆[VAR[幾年]]」
[SRC[>>19, >>20, >>1731]]
- [58] 
[CITE[日本帝皇年代記]]
[WEAK[(16世紀頃成立)]]
([[聖武天皇]]時代) 「[V[己巳天平聖暦]]」
[SRC[>>59 (紹介論文 (上) PDF 28 ページ)]]
- [22] 
[CITE[公卿補任]]、
「天平聖曆[VAR[幾年]]」
[SRC[>>1731]]
-- [23] どの本のどの条項か不明
-
[6] 
[CITE[番鍛冶次第附録年代記]]
「天平聖暦」
[SRC[>>7 普及版 p.145]]
-- [24] 
[CITE[年号読方考証稿]] からの孫引きの可能性あり要検証
- [39] [CITE[皇山竹林寺縁起]]
-- [43] 
[CITE[篁山竹林寺縁起絵巻]] (上) 
「[V[爰仁皇四十五代聖武天皇御宇天平[ASIS[正][<https://glyphwiki.org/wiki/u2ff1-u4e00-cdp-8962>]]暦二年[LINES[庚][午]]中]]
[V[夏之比]]」
[SRC[>>42]]
-- [41] [CITE[皇山竹林寺縁起]]
「[V[[RUBY[爰][ココニ]]仁皇四十五代 聖武天皇御宇天平正暦二年[ASIS[〈][アキなし]]庚]]
[V[午[ASIS[〉][アキなし]]中夏之[RUBY[比][コロ]]、]]」
[SRC[>>40]]
-- [45] 
広島大学本 [CITE[篁山竹林寺縁起]]
「[V[爰󠄂[SUP[ニ]]仁]]
[V[皇四十五代[SUP[聖]]武天皇御[SUP[ノ]][ASIS[□][⿻亡ノ〔宇〕]][SUP[ニ]]天平勝宝二]]
[V[年[SUP[庚虎]]中夏之[RUBY[頃][コロ]]]]」
[SRC[>>44]]
- [37] [[日本国]][[愛媛県]][[松山市]][[円明寺]]
-- [49] 公式 [[Webサイト]]
「聖武天皇の勅願所で、天平正暦年間に、」 [SRC[>>34]]
--- [38] 寺に伝わる縁起を元にしたものか
-- [47] 台湾の [[Webサイト]]にも[TIME[令和2(2020)年][2020]]に追加されたが出典不明
[SRC[>>46]]
-- [48] 
縁起に聖武天皇の天平勝宝元年に云々と説明している [[Webサイト]]が多い。


[REFS[
- [30] [CITE[【[[掌中歴]]】]], [TIME[2021-02-27T07:56:38.000Z]] <http://base1.nijl.ac.jp/iview/Frame.jsp?DB_ID=G0003917KTM&C_CODE=KSRM-266204&IMG_SIZE=&PROC_TYPE=null&SHOMEI=%E3%80%90%E6%8E%8C%E4%B8%AD%E6%AD%B4%E3%80%91&REQUEST_MARK=null&OWNER=null&BID=null&IMG_NO=21>
- [32] [CITE@ja[[[二中歴]] : 尊経閣叢刊. 第2 - 国立国会図書館デジタルコレクション]], [TIME[2021-02-27T07:59:29.000Z]] <https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1186097/5>
- [61] [CITE@ja[[[続群書類従]]. 第29輯ノ下 雑部 - 国立国会図書館デジタルコレクション]], [TIME[2021-02-28T03:40:52.000Z]] <https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/936491/12>
- [59] [CITE[[[日本帝皇年代記]]]]

[FIG(quote)[
[FIGCAPTION[
[50] [CITE[本地垂迹資料便覧]], [TIME[2021-02-11 11:24:54 +09:00]] <http://www.lares.dti.ne.jp/hisadome/honji/files/MISHIMA.html>
]FIGCAPTION]

>
[BOX(center)[
[B[「宴曲抄」中巻]]
]BOX]
>
[B[三嶋詣]]
>[SNIP[]]其より以来、アノ、終に聖武の御宇には、天平聖暦の事かとよ。[SNIP[]]

]FIG]

- [28] [CITE@ja[[[史籍集覧]]. 23 - 国立国会図書館デジタルコレクション]], [TIME[2021-02-27T07:46:36.000Z]] <https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1920383/4>
- [40] [CITE[行基と竹と文殊のえにし : 『篁山竹林寺縁起』を読む-[[広島文教大学]]]], [TIME[2021-02-27 21:34:43 +09:00]] <http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/h-bunkyo/detail/135020140521124704>
PDF 3ページ
- [44] [CITE[篁山竹林寺縁起]](広島大学蔵写本) 4/21, [TIME[2013-08-14 14:06:14 +09:00]] <http://opac.lib.hiroshima-u.ac.jp/portal/dc/kyodo/chikurinji/shahon/4.html>
- [42] [CITE[[[篁山竹林寺縁起絵巻]] デジタル郷土図書館]], [TIME[2013-08-14 14:06:14 +09:00]] <http://opac.lib.hiroshima-u.ac.jp/portal/dc/kyodo/chikurinji/1.html>
- [54] [CITE@ja[[[七大寺巡礼私記]] - 国立国会図書館デジタルコレクション]], [[大江親通]], [TIME[昭和11][year:1936]] <http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1145443/34>

[FIG(quote)[
[FIGCAPTION[
[34] [CITE[四国八十八ヶ所53番札所 [[円明寺]]]]
([TIME[2015-03-25 18:33:12 +09:00]])
<https://www.ko-pri.com/88/ehime/53/53_enmyouji.htm>
]FIGCAPTION]

> 聖武天皇の勅願所で、天平正暦年間に、行基菩薩を開基として、和気の海浜西山に創建せられて、海岸山円明密寺と名づけられました。

]FIG]

[FIG(quote)[
[FIGCAPTION[
[46] [CITE@zh[“四國遍路 [[圓明寺]]”的版本间的差异 - 揭密真相]], [TIME[2021-02-27 22:07:39 +09:00]] <https://pediainside.com/index.php?title=%E5%9B%9B%E5%9C%8B%E9%81%8D%E8%B7%AF_%E5%9C%93%E6%98%8E%E5%AF%BA&diff=1786767&oldid=1786543>
]FIGCAPTION]

>2020年8月24日 (一) 12:34的版本[SNIP[]]
>JTA

> 傳天 平正暦 年 間、行基 菩薩 開基、整備七堂伽藍建立大 寺 創 建 。

]FIG]

]REFS]

[52] [CITE[興福寺流記]], [TIME[2017-01-03 03:07:45 +09:00]] <http://www.kagemarukun.fromc.jp/page028o.html>

[53] [CITE[13_60_2_110.pdf]], [TIME[2014-01-26 04:59:58 +09:00]] <http://kiyou.lib.agu.ac.jp/pdf/kiyou_13F/13_60_2F/13_60_2_110.pdf#page=39>

[56] [CITE[ri04_04707.pdf]], [TIME[2008-10-01 15:31:20 +09:00]] <https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/ri04/ri04_04707/ri04_04707.pdf#page=8>

[57] [CITE[日本五山漢詩中普陀山文化意象的嬗變_古琴茶舍_新浪博客]], [TIME[2021-02-26 19:24:08 +09:00]] <http://blog.sina.com.cn/s/blog_46a27b7a0101ic6o.html>


-*-*-

[27] 
[CITE[教行信証]]
に、
「奏達[ASIS[太上天皇 [WEAK[諱尊成]]][後鳥羽上皇]] [ASIS[今上 [WEAK[諱爲仁]]][土御門天皇]] 聖暦
承元丁卯歳仲春上旬之候。」
とありました。 [SRC[>>25]]

[1919] 
[[伴信友]]は、
[[本願寺]]三世[[覺如]]の
[CITE[親鸞聖人繪詞]]
に「[V[今上聖曆承元丁卯歳]]」
とあるのを引いて、
御世を祝した僧徒の文だろうとしました。
[SRC[>>1731]]

[26] 
この説によれば[[元号名]]に添えられたに過ぎず、
[[元号名]]の一部でもバリエーションでもありません。
しかし[[元号名]]の上と下とで位置が違うのは気になります。

-*-*-

[11] 
[CITE[[[日本年号史大事典]]]]
は、
[[天平感宝]]の誤りであろうとしました。
[SRC[>>7 普及版 p.145]]



[REFS[
- [25] [CITE[SAT DB]], [TIME[2021-02-27T07:36:19.000Z]] <https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat2.php?mode=detail&useid=2646_,83,0642c06&key=%E8%81%96%E6%9A%A6&ktn=&mode2=2>
- [19] [CITE@ja[[[運歩色葉集]] - 国立国会図書館デジタルコレクション]], [TIME[2021-02-27T06:35:57.000Z]] <https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1126453/17>
- [20] [TIME[2001-04-06T08:38:06.000Z]], [TIME[2021-02-27T06:36:27.612Z]] <https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_seiunpoirohashu.txt>
- [1731] [CITE[[[年号の論]]]]
- [7] [CITE[[[日本年号史大事典]]]]
]REFS]

* 天平革

[SEE[ [[天平十七年八月]], [[天平十二年八月日]] ]]



* 古代年号

[12] [[神武天皇]]時代の[[元号]]にあったとする説があります。
[SEE[ [[古代年号]] ]]

* メモ

[17] 
[[日本国]][[奈良県]][[奈良市]]の[[頭塔]]の方柱碑に
「自天年十八丙戌至寛保三癸亥一千歳建吊之也」
とあったとされます
[SRC[>>16 p.277]]
が、
他の資料では
「天''平''十八丙戌」
となっています [SRC[>>18]]。
誤植でしょうか。
あるいは現物の字形が[[年]]の[[異体字]]に近いのでしょうか。

[REFS[
- [15] [CITE[[[佛敎考古學論攷]] 四 佛塔編]]
-- [16] [CITE[頭塔の復原]], pp.273-290, 初出昭和三三年九月
- [18] [CITE@ja[伊賀・大和日蓮宗諸寺]], [TIME[2020-07-15 17:59:52 +09:00]] <http://www7b.biglobe.ne.jp/~s_minaga/n_yamato.htm>
]REFS]