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インパクト投資 社会を良くする資本主義を目指して を読んだ

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@github-actions github-actions released this 12 Jun 14:09
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By @azu #40

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Amazon.co.jp: インパクト投資 社会を良くする資本主義を目指して (日本経済新聞出版) eBook : ロナルド・コーエン, 斎藤聖美: Kindleストアを読んだ。

インパクト投資入門は、そういう企業の紹介的な本だったけど、こちらの方は実践の仕方についての本だった。インパクト投資 = 計測という印象が強かったけど、まさにその話が多くて、パフォーマンス計測とかそういう話が好きな人は読むと面白いと思う。

なぜ測定するか

なぜ測定するのかという話が良かった。
次の3つの目的に大体集約されるという話。

  • ●学びのための測定(Measure for Learning)
    • 結果を知るため
    • 経験のみに頼らないため
  • ●行動のための測定(Measure for Action)
    • 結果の性質がわかったら、それを改善する行動が取れる
    • 意見を一致させるために
  • ●説明責任のための測定(Measure for Accountability)
    • 外部に対して説明
    • 参加を継続してやるために

また測定対象は

❶測定は実行可能であるべきだ
❷測定は管理可能であるべきだ
❸測定は比較可能であるべきだ

というのもよかった。

これ自体は、パフォーマンス計測とか他の話でも結構利用できる概念。

何かを改善するときに、まずは計測から入るのがよくあることだけど(推測するな、計測せよ)、それを説明する感じになっててよかった。
ウェブサイトのパフォーマンス改善とかは、まさに測定対象をかなり意識するところからスタートしたりすることが多い。
遅いと感覚ではわかっていても、それが測定可能じゃない場合は改善が難しいという感覚がある。

測定とプロセス

社会的インパクト測定の実際的な狙いを説明する前に、測定のもっとも基本的かつ貴重な役割の1つを認識しておこう。すなわち、戦略や行動の指針となる共通のビジョンを作り出すという役割だ。測定プロセスは、インパクトについての考え方に問いを投げかけ、精査することでその役割を果たす。どの測定方法が測定内容をもっともうまく表せるかについて意見の一致を見るためには、まず、測定内容そのものをどのように理解するかについて合意しなければならない。有益な測定は、何が測定されているかという明確な理解を前提としている。組織が測定システムを構築しようとしたときに初めて、測定によって表される現実世界について関係者の考え方が異なることがわかったという例もあるのだ。
たとえば、女児に教育を受けさせる活動をしている組織の理事全員が、組織の第一目標は「エンパワーメント」であることに合意したとする。だがそのエンパワーメントをどのように測定するかについて意見を求めると、何をもってエンパワーメントとするかについて理事一人ひとりの考え方が大きく異なることが判明する。教育を修了する女児の数と言う理事もいれば、妊娠や結婚の年齢が上がることと言う理事もおり、また別の理事は家以外の場所で働くことを重視し、さらに別の理事は家庭内の意思決定への参加が最高の測定基準だと言うかもしれない。
 インパクト測定システムの構築プロセスは、こうした考え方や価値観の違いを浮き彫りにし、その違いを乗り越えて組織のインパクト目標に向けた共通のビジョンを作り出す機会を与えてくれる。実際、このプロセスが測定そのものよりも貴重な機会にさえなり得るのだ

ゴールを明確にする

セオリーオブチェンジの話はちょっと難しくてよくわからなかったけど、分析手法に出てきたロジックモデルの手法は参考になった

基本的なロジックモデルは5つの要素で構成される。
 ●インプット(投入)はプログラムに対するリソースと制約の両方を含む。リソースはプログラムが活動にあたって使うもので、人材や資金、物、文化などが含まれる。制約は組織の内外の制約であり、活動地域の法規制や資金不足もここに含まれる。プログラムはリソースを活用し、制約の範囲内で最大限のインパクトを生み出そうとする。
 ●アクティビティ(活動)はプログラムまたは取り組みを実施するために取る行為で、プロセスや事象、行動が含まれる。プログラムはリソースを使ってアクティビティを実施し、目標とする成果を達成しようとする。アクティビティは、プログラムのために計画された作業だ。
●アウトプット(結果)は組織の活動による直接の結果であり、成果物だ。アウトプットには受益者に提供される製品やサービス、投資対象やその他完了したプロジェクトへの継続的支援も含まれる。
●アウトカム(成果)は投資対象に直接およぶ効果で、インパクト目標を達成するために必要なものを指す。これは投資対象の行動、態度、能力、または特定の社会的・環境的変動要素に対してプログラムが直接的におよぼす影響だ。成果は1年から3年で達成される短期的成果と、4年から6年で達成できる長期的成果に分けられることもある。 ●インパクト(社会経済的変化/波及効果)は社会的組織の最終目標であり、社会問題に対する体系的かつ基本的な進歩だ。インパクトは、そもそも組織がなぜ存在するかというその理由の根幹を成す。

測定手法の分類

測定手法は、4つの基本的な区分に分けられる。専門家の判断、定性的調査、定量化、そして貨幣化だ
●専門家の判断──経験豊富な専門家によるプログラムについての議論や観察。
●定性的調査──社会的インパクトについての体系的かつ徹底的な調査で、現場視察や構造化インタビュー調査、フォーカスグループなどを含む。
●定量化──数値の形でのデータおよび報告。直接測定だけでなく、インタビューへの回答も含む。
●貨幣化──測定されたインパクトの一部またはすべてを貨幣価値に換算する定量的評価

社会的投資収益率(SROI)
社会的投資収益率(SROI:Social Return on Investment)はよく知られた貨幣化技術の1つで、この手法を最初に取り入れたのはアメリカのベンチャーフィランソロピー《ロバーツ・エンタープライズ開発ファンド》(REDF)だ。SROIの狙いは社会的投資が生み出せるリターンを評価するところにある。企業投資により期待される、あるいは実現する金銭的利益を評価するために用いられる投資収益率(ROI)と概念的には似たものだ。SROIの計算方法はいろいろあるが、一般的にはプロジェクトが生み出すインパクトを、投資された金額で割る方法で算出される。SROIが大きければ多いほど、1ドル当たりのインパクトは大きい。REDFのSROIフレームワークは、構築された当初には6つの主要な測定基準で構成されていた。企業価値、社会目的の価値、複合的価値、企業収益指数、社会目的指数、複合的収益指数(※8)。それぞれの価値が算出され、10年という期間について割り引かれる

インパクト投資とリターン

投資に対するリターンは、ざっくり4つのカテゴリーに分けられる。アイデンティティのリターン、プロセスのリターン、金銭的リターン、そして社会的インパクトだ。

  • インパクト投資は、一応金銭的なリターンを目的とすることもできるけど、そのリターンは普通の株式などに比べれば時間がかかるし金額も大きくはない傾向はある。
  • それでもなぜ投資するのか?という話

インパクト投資の旅路を進むなかでつい見過ごされがちだが実は重要な要素が、投資の動機を理解するということだ。これこそ、意図に合った成果を確実に得るための第一歩だ。自分は何者なのか? 何を一番大事に思っているのか? 何をもってすれば、自分の投資は成功したと言えるのか? そして何を投資するのか?

  • 金以外のリターンがあるからで、それが見える形 = 測定されたものじゃないと、投資側も何に投資していいのかわからないという話は結構納得した。
  • ロックフェラー回顧録でも、何に投資(寄付)するべきかというのは実際専門家がいて、普通の仕事以上の労力がかかってる感じだった
  • なので、測定にはコストはかかるけど、測定する価値はあるし、実際測定しようと思うと目的とかを結構整理する機会になって面白い。
  • Release Working in Public を読んだ - azu/book-review で書いてたけど、オープンソースもかなり近い文脈を持ってるので、色々と学びがあった