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shotaro-n-nakamura committed Jun 15, 2021
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title: "Lowes and Montero (2021):医療への不信に関する歴史経済学の話"
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皆さんこんにちは。コロナウイルスの感染第4波の中、日本でもワクチン接種のペースが[6月中旬現在で1日平均70万回弱](https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-vaccine-status/)まで上昇してきています。現時点での輸入量の不足や配送の遅れなど供給側の問題が(特に1ヶ月後に迫ったオリンピックへの懸念とともに)目下の課題であると思われますが、今後の国内での感染拡大を防ぐためには少なくとも人口の大多数がワクチン接種などによる免疫取得が必要であると言われています(注:コロナウイルス 感染に関するリスクやワクチンに関する詳しい情報は厚生労働省などの公的機関からの情報をご確認ください)。供給制約が緩和された国(アメリカやイスラエルなど)では、いまだに接種していない人々にどう接種を促すか(つまり受容側の問題)が課題となっています。日本もワクチンに対する不信感を抱く人々の割合が高いとされ、過去にも新三種混合(MMR)やHPVワクチンなどに対する副作用がメディアで大々的に取り上げられた結果、接種の推奨が中止され、子宮頸癌においては避けられたはずの患者や死者が発生するだろうとの[研究](https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65331980S0A021C2CR8000/)も出ています。
皆さんこんにちは。コロナウイルスの感染第4波の中、日本でもワクチン接種のペースが[6月中旬現在で1日平均70万回弱](https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-vaccine-status/)まで上昇してきています。今後の国内での感染拡大を防ぐためには少なくとも人口の大多数がワクチン接種などによる免疫取得が必要であると言われています(注:コロナウイルス 感染に関するリスクやワクチンに関する詳しい情報は厚生労働省などの公的機関からの情報をご確認ください)。過去数ヶ月はの輸入量の不足や配送の遅れなど供給側の問題が(特に1ヶ月後に迫ったオリンピックへの懸念とともに)目下の課題として取り上げられてきましたが、供給制約が緩和された国(アメリカやイスラエルなど)では、いまだに接種していない人々にどう接種を促すか(つまり受容側の問題)が課題となっています。日本もワクチンに対する不信感を抱く人々の割合が高いとされ、過去にも新三種混合(MMR)やHPVワクチンなどに対する副作用がメディアで大々的に取り上げられた結果、接種の推奨が中止され、子宮頸癌においては避けられたはずの患者や死者が発生するだろうとの[研究](https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65331980S0A021C2CR8000/)も出ています。

コロナワクチンにおいては今後(恐らく)供給側の問題が解決されていく中で、接種を躊躇っている人達にいかに接種を促すかが公衆衛生の課題となっていくという仮定のもと、今回は経済学の知見の中で「医療制度に対する不信はいかにして生まれるのか」というテーマの研究を紹介します。直接的にコロナワクチンと関連する内容では無いのですが、予防接種を躊躇する理由の根底の一つとしての「不信」について掘り下げてみよう、という趣旨です。この先の課題として「コロナワクチン接種を躊躇する理由が色々あるにしろ、いかに接種を促すか」という論文も行動心理学などの研究であるのでそちらも今後紹介していければと思っています。

### 概要
今回は「フランス帝国の植民地での病原菌対策が現地の住民の近代医療、あるいは公衆衛生制度、介入に対する不信を生み出した」ということを立証した[Lowes and Montero (2021, American Economic Review)](https://scholar.harvard.edu/slowes/publications/colonial-medicine)についてまとめます。コロナとは直接関係ない経済史の論文ですが、「現代医療に対する不信」という点をしっかりついている上、現在の保健制度に影響する話もあるのでご了承ください。
今回は「フランス帝国の植民地での病原菌対策が現地の住民の近代医療、あるいは公衆衛生制度、介入に対する不信を生み出した」ということを立証したLowes and Montero (2021, American Economic Review)[The Legacy of Colonial Medicine in Central Africa](https://scholar.harvard.edu/slowes/publications/colonial-medicine)についてまとめます。コロナとは直接関係ない経済史の論文ですが、「現代医療に対する不信」という点をしっかりついている上、現在の保健制度に影響する話もあるのでご了承ください。

### 趣旨
この論文はまず現在のアフリカにおいて医療への不信感や医療機関の使用率が低い、という事例から始まります。恐らくその他の要因や内生的なファクターもあるのでしょうが、外生的な歴史的背景を掘り下げていくと突き当たる一つの点がフランス帝国の植民地下での病原菌対策が、かなり過激であった(速い話が結構やばかった)という事です。西アフリカを植民地支配していたフランス帝国は睡眠病などの疫病の蔓延を危惧し、1920年代に大規模な公共衛生介入を行いました。軍隊によって設置された衛生班が農村部を周り、強制的に人々に(比較的精度の低い)検査を受けさせ、陽性と判断された人々には強い副作用をもたらす(例:20%の摂取者に失明を起こす)砒素ベースの薬などを使った治療を施し、その後も効用がないにもかかわらず他の副作用の強い治療などを続けました。多くの西アフリカの人々にとってそれが近代医学に触れる最初の機会でした。(経済学あるあるかもしれませんが)歴史学や人類学ではこのような植民政策が医療に対する不信感を生んだ可能性において先行知見があり、それでは統計を使って経済学として因果関係を紐解こう、そしてこれらの歴史的背景が現在の医療介入の効用に影響しているのかを測定してみよう、というのが少なくとも表面的な趣旨です。
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