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Yacto

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Yacto は、Ecto で手が届きにくい部分をサポートするためのライブラリです。

大まかに以下の機能があります。

  • マイグレーションファイルの自動生成
  • 別アプリケーションからのマイグレーションの利用
  • 水平分割したデータベースへのマイグレーション
  • 複数データベースを跨るトランザクション(XA トランザクション)

マイグレーションファイルの自動生成

Yacto は、特にマイグレーション周りが Ecto と異なります。 Ecto はスキーマとマイグレーションを別で定義していましたが、Yacto は スキーマからマイグレーションファイルを自動的に出力します

具体的には、以下の様にスキーマを定義したとして、

lib/my_app/player.ex:

defmodule MyApp.Player do
  use Yacto.Schema, dbname: :player

  schema @auto_source do
    # sharding key
    field :player_id, :string, meta: [null: false, size: 64]
    field :hp, :integer, default: 0, meta: [null: false]
    index :player_id, unique: true
  end
end

この状態で mix yacto.gen.migration を実行すると、以下の様なマイグレーションファイルが出力されます。

priv/migrations/Elixir.MyApp.Player/0000-player-create-2020_04_22_085825.exs:

defmodule MyApp.Player.Migration0000 do
  use Ecto.Migration

  def change() do
    create table("myapp_player")
    alter table("myapp_player") do
      add(:hp, :integer, [null: false, size: 64])
      add(:player_id, :string, [null: false])
    end
    create index("myapp_player", [:player_id], [name: "player_id_index", unique: true])
  end

  def __migration__(:structure) do
    {MyApp.Player, %Yacto.Migration.Structure{fields: [:id, :player_id, :hp], meta: %{attrs: %{hp: %{null: false}, player_id: %{null: false, size: 64}}, indices: %{{[:player_id], [unique: true]} => true}}, source: "myapp_player", types: %{hp: :integer, id: :id, player_id: :string}}},
  end

  def __migration__(:version) do
    0
  end
end

あとは mix yacto.migrate を実行すれば、このマイグレーションファイルがデータベースに反映されます。 もうマイグレーションファイルを自分で記述する必要はありません。

更に、この状態で MyApp.Player スキーマに :mp フィールドを追加して mix yacto.gen.migration を実行すると、以下のマイグレーションファイルが生成されます。

lib/my_app/player.ex:

defmodule MyApp.Player do
  ...

  schema @auto_source do
    ...

    # add a field
    field :mp, :integer, default: 0, meta: [null: false]

    ...
  end
end

priv/migrations/Elixir.MyApp.Player/0001-player-change-2020_04_22_092258.exs:

defmodule MyApp.Player.Migration0001 do
  use Ecto.Migration

  def change() do
    alter table("myapp_player") do
      add(:mp, :integer, [null: false])
    end
  end

  def __migration__(:structure) do
    [
      {MyApp.Player, %Yacto.Migration.Structure{fields: [:id, :player_id, :hp, :mp], meta: %{attrs: %{hp: %{null: false}, mp: %{null: false}, player_id: %{null: false, size: 64}}, indices: %{{[:player_id], [unique: true]} => true}}, source: "myapp_player", types: %{hp: :integer, id: :id, mp: :integer, player_id: :string}}},
    ]
  end

  def __migration__(:version) do
    1
  end
end

このように、以前からの差分だけがマイグレーションファイルに出力されます。 mix yacto.migrate を実行すれば、このマイグレーションファイルがデータベースに反映されます。

もしマイグレーションファイルが1つもデータベースに適用されていなかったら、上記の2つのマイグレーションファイルが順番に適用されます。

別アプリケーションからのマイグレーションの利用

先程作った my_app アプリケーションを利用する other_app アプリケーションがあったとします。 my_app はデータベース利用しているので、other_app 上で my_app のためのマイグレーションを行う必要があります。 Yacto を使えば、config/config.exs を適切に書いた後、other_app で以下のコマンドを実行するだけで my_app のマイグレーションができます。

mix yacto.migrate --app my_app

Ecto では、他のアプリケーションが必要としているマイグレーションを自分で書くか、各アプリケーションが指定したバラバラな方法でマイグレーションを行う必要がありました。 Yacto を使っているアプリケーションでは、全て同じ方法でマイグレーションができます。

水平分割したデータベースへのマイグレーション

例えば MyApp.Player スキーマを水平分割した場合、このスキーマのマイグレーションファイルを複数の Repo に適用する必要があります。 これは、設定ファイルに以下の様に書くだけで出来ます。

config/config.exs:

config :yacto, :databases,
  %{
    default: %{
      module: Yacto.DB.Single,
      repo: MyApp.Repo.Default,
    },
    player: %{
      module: Yacto.DB.Shard,
      repos: [MyApp.Repo.Player0, MyApp.Repo.Player1],
    },
  }

MyApp.Player に以下のコードがあったことを思い出して下さい。

lib/my_app/player.ex:

defmodule MyApp.Player do
  use Yacto.Schema, dbname: :player

  ...

この :player が、MyApp.Player が所属する Repo のグループ名です。 MyApp.Player:player という Repo グループに所属しており、:player Repo グループは設定ファイルから MyApp.Repo.Player0MyApp.Repo.Player1 の Repo に紐付いていることが分かります。

設定ファイルを書いたら、あとは mix yacto.migrate を実行するだけです。 MyApp.Player のマイグレーションファイルが MyApp.Repo.Player0MyApp.Repo.Player1 に適用されます。

水平分割したデータベースを利用する時には、Yacto.DB.repo/2 を使って Repo を取得します。

repo = Yacto.DB.repo(:player, shard_key: player_id)
MyApp.Player |> repo.all()

他のアプリケーションから利用する

もちろん、この水平分割した my_app アプリケーションを other_app で利用することもできます。 other_app で以下の様に設定ファイル書いて、

config/config.exs:

config :yacto, :databases,
  %{
    default: %{
      module: Yacto.DB.Single,
      repo: OtherApp.Repo.Default,
    },
    player: %{
      module: Yacto.DB.Shard,
      repos: [OtherApp.Repo.Player0, OtherApp.Repo.Player1, OtherApp.Repo.Player2],
    },
  }

mix yacto.migrate --app my_app を実行すると、OtherApp.Repo.Player0OtherApp.Repo.Player1OtherApp.Repo.Player2MyApp.Player スキーマのマイグレーションファイルが適用されます。

複数データベースを跨るトランザクション(XA トランザクション)

Yacto.transaction/2 を使うと、複数のデータベースを指定してトランザクションを発行できます。

# 2つ以上の Repo が指定されているので XA トランザクションを発行する
Yacto.transaction([:default,
                   {:player, player_id1},
                   {:player, player_id2}], fn ->
  default_repo = Yacto.DB.repo(:default)
  player1_repo = Yacto.DB.repo(:player, player_id1)
  player2_repo = Yacto.DB.repo(:player, player_id2)

  # ここら辺でデータベースを操作する
  ...

# ここで全ての XA トランザクションがコミットされる
end)

以下の3つの Repo に対してトランザクションを行います。

  • :default の Repo MyApp.Repo.Default
  • player_id1 でシャーディングされた Repo
  • player_id2 でシャーディングされた Repo

後ろの2つは、シャードキーによっては同じ Repo になる可能性があるので、利用する Repo は2つか3つのどちらかです。 2つ以上の Repo を利用してトランザクションを開始する場合、自動的に XA トランザクションになります。

XA トランザクションは確実に不整合が防げる訳ではありませんが、別々でトランザクションを発行するよりは防げます。 ただしこのライブラリでは XA RECOVER に残ったトランザクションを解決する仕組みを提供していないので、別途用意する必要があります。

Yacto のスキーマ

Yacto のスキーマについて、まだ説明していない部分があるので、もう少し詳しく説明します。

最初に書いたように、Yacto のスキーマは以下の様に定義します。

defmodule MyApp.Player do
  use Yacto.Schema, dbname: :player

  schema @auto_source do
    field :player_id, :string, meta: [null: false, size: 64]
    field :hp, :integer, default: 0, meta: [null: false]
    index :player_id, unique: true
  end
end

基本的には Ecto.Schema と変わりません。 Yacto.Schema で生成したスキーマは、Ecto.Schema で生成したスキーマと互換性があります。 ただしマイグレーションに関する設定が含まれるので、Ecto.Schema よりもいくつか設定が増えています。

テーブル名の自動生成

@auto_source には、モジュール名から自動的に生成したテーブル名が定義されています。 大抵の場合、自動的に決まった名前で問題ないと思うので、常に @auto_source を使うので問題ないでしょう。

メタ情報

field :player_id, :string, meta: [null: false, size: 64]
field :hp, :integer, default: 0, meta: [null: false]
field :height, :decimal, meta: [precision: 10, scale: 3]

ここは Ecto.Schemafield/3 関数とほとんど同じですが、:meta オプションがあるという点で異なります。 :meta オプションはマイグレーションに関する情報を入れる場所で、そのフィールドが null 可能かどうかや、文字列のサイズ等を指定します。

指定可能なオプションは以下の通りです。

  • :null: そのフィールドが null 可能かどうか(デフォルトでは true
  • :size: 文字列のサイズ(VARCHAR(255)255 に相当する部分)(デフォルトでは 255
  • :default: そのフィールドのデフォルト値(デフォルトでは各型の初期値か、opts[:default] が存在している場合はその値が入る)
  • :precision: field/3 に渡す型が :decimal の場合の最大桁数を指定する(デフォルト値は利用する DB の仕様に従う)
  • :scale: field/3 に渡す型が :decimal の場合の小数部の桁数を指定する(デフォルト値は利用する DB の仕様に従う)
  • :index: このフィールドでインデックスを張るかどうか(デフォルトでは false
  • :type: マイグレーション時の型を指定する(デフォルトでは field/3 で指定した型)

インデックス

index :player_id, unique: true

index/2 でインデックスを生成できます。 field/3:meta オプションの中でもインデックスを指定できますが、index/2 を使うと複合インデックスやユニークインデックスも生成できます。

複合インデックスにするなら index [:player_id, :hp] のようにリストで指定します。 ユニークインデックスにするならオプションで unique: true を指定します。

外部キー制約

対応していません。 必要だと思ったのであれば、ぜひ実装して pull req 下さい。

便利関数

Yacto は、Repo に便利な関数を定義する Yacto.Repo.Helper を提供しています。

defmodule MyApp.Repo do
  use Ecto.Repo, otp_app: :my_app
  use Yacto.Repo.Helper
end

これによって、以下の関数が定義されます。

  • def count(queryable, clauses, opts \\ [])

Ecto.Query.where で絞り込んで要素数を返します。

  • def find(queryable, clauses, opts \\ [])

Ecto.Query.where で絞り込んで Repo から取得します。

  • def delete_by(queryable, clauses, opts \\ [])
  • def delete_by!(queryable, clauses, opts \\ [])

Ecto.Query.where で絞り込んで Repo から削除します。 delete_by!/3 は、削除した件数が 0 だった時に Ecto.NoResultsError 例外を投げます。

  • def find_for_update(queryable, clauses, opts \\ [])
  • get_for_update(queryable, id, opts \\ [])
  • get_for_update!(queryable, id, opts \\ [])
  • get_by_for_update(queryable, clauses, opts \\ [])
  • get_by_for_update!(queryable, clauses, opts \\ [])

SELECT ... FOR UPDATE のクエリを使って要素を取得する関数です。

find_for_update/3find/3 のクエリに Ecto.Query.lock("FOR UPDATE") を付けただけの関数です。 get_for_update/3get_by_for_update/3 関数は、Ecto.Repo.getEcto.Repo.get_by のクエリに Ecto.Query.lock("FOR UPDATE") を付けただけの関数です。

  • get_by_or_new(queryable, clauses, default_struct, opts \\ [])
  • get_by_or_insert_for_update(queryable, clauses, default_struct_or_changeset, opts \\ [])

get_by_or_new/4 は、まずレコードを取得してみて、あればそのレコードを、無ければデフォルト値 default_struct を返します。無かった場合でもデータベースへの挿入は行いません。 ロックを取らないので、この get_by_or_new/4 で得られた値を使ってデータベースへ挿入や更新をしてはいけません。 戻り値は {record, defaulted} の2要素のタプルになっていて、1要素目には取得できたレコード(あるいはデフォルト値)が、2要素目にはデフォルト値を返したかどうかのフラグが設定されます。

get_by_or_insert_for_update/4 は、get_by_or_new/4 の排他ロックを取るバージョンです。 まずレコードを取得してみて、あればそのレコードを、無ければ新規に default_struct_or_changeset を挿入して返します。この時、返されるレコードは排他ロックされます。 戻り値は {record, created} の2要素のタプルになっていて、1要素目には取得できたレコード(あるいは挿入したデフォルト値)が、2要素目には新しく挿入したかどうかのフラグが設定されます。

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