LMQ は Erlang 製のメッセージキューです。 HTTP API を使ってキューに任意のデータを投入し、任意のタイミングで取り出すことができます。
LMQ は使いやすく、運用しやすく、十分に早い MQ を目指して開発されました。 その上で、流れ込むメッセージを処理するための特徴的な機能をいくつか有しています。
LMQ は次のような特徴を持ちます。
- REST ベースの HTTP API で簡単に利用できる
- 1台で動作し、2台をつなげば冗長化できる
- in memory で十分に早く動作する
- 名前を付けて複数のキューを作成できる
- タイムアウトに基づくメッセージの再送
- キュー毎にタイムアウト時間等のプロパティを個別に設定できる
- キューの自動作成
- 投入されたメッセージは常にキューに蓄積される
- コンシューマがいなくてもロストしない
- LMQ 内で複数のキューへメッセージを複製
- 投入されたメッセージの時間単位での集約
- 統計情報の出力
※仕様は開発中のもので、将来のバージョンで非互換の変更が加わる可能性があります。
Erlang R16B01 以上が必要になりますので、あらかじめインストールしておいてください。
リポジトリを取得し、以下のコマンドを実行します。
$ cd $REPO_ROOT
$ make rel
これにより、$REPO_ROOT/rel/lmq
ディレクトリに必要なファイルが全てコピーされます。
起動するには以下のコマンドを実行します。
$ bin/lmq start
起動しているか確認するには以下のようにします。
$ bin/lmq ping
pong
これでシングル構成で動作するようになります。
メッセージの投入は HTTP 経由で行います。以下では重要でないヘッダは省略しています。
$ curl -i -XPOST localhost:9980/messages/myqueue -H 'content-type: text/plain' -d 'hello world!'
HTTP/1.1 200 OK
content-length: 15
content-type: application/json
{"accum":"no"}
{"accum":"no"}
は、キューがメッセージをどのように処理したかを示しています。詳細はメッセージの集約を参照してください。
キューに投入したメッセージを取り出します。
$ curl -i localhost:9980/messages/myqueue
HTTP/1.1 200 OK
content-length: 12
content-type: text/plain
x-lmq-queue-name: myqueue
x-lmq-message-id: f0eca12e-19f2-4922-bcc9-6e42bd585937
x-lmq-message-type: normal
hello world!
レスポンスボディは投入したメッセージがそのまま返ってきます。content-type
も同様です。
その他、メッセージを処理するために重要な情報が HTTP ヘッダに含まれます。x-lmq-message-id
は各メッセージに割り当てられたユニークな ID です。LMQ はメッセージの再送処理のために、処理が完了したら ack を返すことになっています。この時にメッセージ ID を用います。
$ curl -i -XPOST 'localhost:9980/messages/myqueue/f0eca12e-19f2-4922-bcc9-6e42bd585937?reply=ack'
HTTP/1.1 204 No Content
404 Not Found
が返ってきた場合は、既にメッセージがタイムアウトして再送待ちになっている可能性があります。メッセージを取り出すところからやり直してみてください。デフォルトでは、再送までの時間は30秒に設定されています。
LMQ には他にも API が用意されています。詳細は HTTP API を参照してください。
キューにはプロパティを設定することができ、その値により各キューの動作をカスタマイズすることができます。利用可能なプロパティと、デフォルト値は以下の通りです。
name | type | default | description |
---|---|---|---|
accum (pack) | float | 0 | メッセージを集約する期間(秒)、0 で無効 |
retry | integer | 2 | メッセージの再送回数 |
timeout | float | 30 | メッセージが再送されるまでの時間(秒) |
LMQ はキューのプロパティを設定するための複数の方法を用意しています。プロパティを設定する全ての API は、変更したいプロパティを投入することが可能です。設定されなかったプロパティにはデフォルト値が使われます。
プロパティは以下の順に優先されます。
- キューに設定されたプロパティ
- デフォルトプロパティリストの最初にマッチしたもの
- システムのデフォルト値(変更不可)
例えば、キュー foo
に {"accum": 15}
というプロパティを設定し、デフォルトプロパティに [[".*", {"timeout": 60}]]
を設定した場合、キュー foo
の実際のプロパティは以下のようになります。
{"accum": 15, "retry": 2, "timeout": 60}
プロパティの変更はいつでも可能ですが、新しいプロパティが反映されるのは、変更後に Put したメッセージだけです。
LMQ はメッセージが Get されてからの経過時間を管理しており、これが timeout
値を超えると、そのメッセージは正しく処理されなかったと見なしてメッセージをキューに戻します。これにより、他のクライアントがメッセージを Get できるようになります。これが LMQ における再送処理です。
LMQ はメッセージを再送する際にメッセージ ID を変更します。そのため、メッセージ ID を指定する必要のある Reply は、再送された元のメッセージに対して呼び出しても失敗します。
メッセージは retry
回数だけ再送されます。そして、この回数を超過したメッセージは破棄されます。retry
を 0 に設定したキューでは、メッセージは決して自動的には再送されませんが、タイムアウトの発生によって破棄される点は同一なので注意してください。メッセージ ID を指定する必要のある Reply は、破棄されたメッセージに対して呼び出しても失敗します。
タイムアウトは ext
を Reply することでリセットできます。時間のかかる処理をする前に ext
を Reply すれば、処理がタイムアウトする可能性を低くすることができます。
また、nack
を Reply する事でメッセージを意図的にキューに戻すことが可能です。結果として、メッセージは即座に再送されます。この場合でもリトライ回数としてカウントされるので注意してください。クライアントがメッセージを処理できない状態になった時は、明示的に nack
を Reply することで、LMQ による再送を待たずに他のクライアントにメッセージを渡すことができます。
LMQ には、一定時間内に特定のキューに Put された全てのメッセージを集約して、時間経過後に一つのメッセージとしてキューに入れる集約機能があります。この集約されたメッセージのことを複合メッセージと呼びます。複合メッセージは通常のメッセージと同様に処理されます。すなわち、再送処理や API による操作は複合メッセージ単位になります。
この機能を有効にするには、キューのプロパティの accum
を 0 より大きくしてください。なお、集約が有効なキューでは、Put されたメッセージは accum
時間が経過するまで取り出せないことに注意してください。
耐障害性を向上させるために、2つ以上の LMQ ノードを使ってクラスタを組むことができます。LMQ クラスタは P2P 方式で実装され、マスターレスモデルになっています。キューのデータはクラスタ内の全ノードで同期されるため、クラスタを構成するノードが落ちたとしても影響はほとんどありません。また、クライアントはクラスタ内のどのノードに対してもリクエストを送ることができます。
クラスタを組むには以下のようにします。説明上は lmq1.example.com と lmq2.example.com でクラスタを組むことにします。
-
etc/vm.args
ファイルを編集します。-name lmq@127.0.0.1
という行の 127.0.0.1 を他のノードからアクセスできる IP アドレス、もしくはホスト名に変更します。例として、それぞれ lmq1.example.com と lmq2.example.com にします。 -
それぞれのホストで LMQ を起動します。
lmq1.example.com$ bin/lmq start lmq2.example.com$ bin/lmq start
-
クラスタを組みます。
lmq2.example.com$ bin/lmq-admin join lmq@lmq1.example.com
lmq2.example.com をクラスタから抜くには以下のようにします。
lmq2.example.com$ bin/lmq-admin leave
LMQ の現在のステータスを表示するには、以下のコマンドを実行します。
$ bin/lmq-admin status
StatsD 経由で Graphite に metrics を送信することができます。デフォルトで localhost:8125 に送るので、別のサーバに送るには app.config
の以下の項目を変更してください。
{statsderl, [
{hostname, "localhost"},
{port, 8125}
]},
また、stats_interval
を1以上にすると、指定した間隔で各キューのメッセージ数を送信します。単位は ms です。パフォーマンスに影響するため、設定するなら 30,000 程度を推奨します。
{lmq, [
{stats_interval, 0}
]},
高いパフォーマンスが必要な環境では、API のアクセスログを無効化することで 15-30% ほど多くの API リクエストを処理できるようになります。
API のアクセスログは info
レベルで吐かれるので、lager の全てのハンドラのログレベルを notice
以上にすればアクセスログによるオーバーヘッドが無くなります。
例えば、以下のように app.config
を設定できます。
{lager, [
{handlers, [
{lager_file_backend, [
[{file, "./log/console.log"}, {level, notice}, {size, 0}, {date, "$D0"}, {count, 14}]
]}
]},
LMQ は HTTP インタフェースを 9980 番ポートで提供しています(ポートは変更可能)。URL に渡す値は全て URL エンコードしてください。
リクエスト/レスポンスは JSON 形式です。
- 概要: メッセージをキューから1つ取得する
- パラメータ:
- name: キュー名
- クエリパラメータ(オプション)
- t: Timeout, メッセージを取得できるまで待つ時間(秒)
- cf: Compound Format, 複合メッセージのフォーマット
- multipart:
multipart/mixed
形式。デフォルト - msgpack:
msgpack
形式
- multipart:
- レスポンスコード:
200 OK
- レスポンスヘッダ:
- content-type: POST 時の content-type
- x-lmq-queue-name: メッセージを取り出したキュー名
- x-lmq-message-id: メッセージの ID
- x-lmq-message-type: メッセージの種類
- normal: 通常のメッセージ
- compound: 複合メッセージ
- レスポンスボディ: POST されたデータ
- 概要: メッセージをキューに追加する
- パラメータ:
- name: キュー名
- リクエストボディ: メッセージの内容となるデータ
- レスポンスコード:
200 OK
- レスポンスボディ:
{"accum": "FLAG"}
- FLAG: 集約処理が行われたかどうか
- new: 新たに集約が開始された
- yes: 既存のメッセージと集約された
- no: 集約されなかった
- 概要: メッセージを regexp にマッチするキューのいずれかから1つ取得する
- パラメータ:
- qre: 対象のキューを絞り込む正規表現
- クエリパラメータ(オプション):
GET /messages/:name
と同様 - レスポンス:
GET /messages/:name
と同様
- 概要: メッセージを regexp にマッチする全てのキューに追加する
- パラメータ:
- qre: 対象のキューを絞り込む正規表現
- リクエストボディ: メッセージの内容となるデータ
- レスポンスコード:
200 OK
- レスポンスボディ:
{
"QUEUE NAME 1": {"accum": "FLAG 1"},
"QUEUE NAME 2": {"accum": "FLAG 2"},
...
}
- QUEUE NAME N: メッセージを追加したキュー名
- FLAG N: 集約処理が行われたかどうか
- new: 新たに集約が開始された
- yes: 既存のメッセージと集約された
- no: 集約されなかった
- 概要: 取得したメッセージの処理結果を通知する
- パラメータ:
- name: キュー名
- msgid: 対象メッセージの ID
- type: 処理結果
- ack: 処理が正常に終了 -> メッセージをキューから削除
- nack: 処理が継続できなくなった -> メッセージをキューに戻す
- ext: 処理に時間がかかっている -> メッセージの処理可能時間を延長
- レスポンスコード:
204 No Content
- 概要: キューを削除する。キュー内のメッセージは全て破棄される
- パラメータ:
- name: キュー名
- レスポンスコード:
204 No Content
- 概要: デフォルトプロパティを取得する
- レスポンスコード:
200 OK
- レスポンスボディ:
[[REGEXP, PROPERTIES], ...]
- REGEXP: 対象のキューを絞り込む正規表現
- PROPERTIES: REGEXP にマッチしたキューに設定するプロパティ
- 概要: デフォルトプロパティを設定する。既存の設定があれば上書きされる
- リクエストボディ:
GET /properties
のレスポンスと同様 - レスポンスコード:
204 No Content
- 概要: デフォルトプロパティを初期化する
- レスポンスコード:
204 No Content
- 概要: キューのプロパティを取得する
- パラメータ:
- name: キュー名
- レスポンスコード:
200 OK
- レスポンスボディ:
{
"accum": ACCUM,
"retry": RETRY,
"timeout": TIMEOUT
}
詳細はキューのプロパティを参照
- 概要: キューのプロパティを部分的に更新する。指定しなかったプロパティは既存の値を踏襲する
- パラメータ:
- name: キュー名
- リクエストボディ: プロパティの内、変更したいものだけを記したもの
例:
{"accum": 30}
{"accum": 30, "retry": 5}
- レスポンスコード:
204 No Content
- 概要: キューのプロパティを初期化する
- パラメータ:
- name: キュー名
- レスポンスコード:
204 No Content
LMQ は MessagePack-RPC インタフェースを 18800 番ポートで提供しています。ここでは、各 API について method(args) -> return_value
の形式で説明します。
戻り値は正常に処理された時のものについて記載します。各 API はエラーを返す可能性がある点に留意してください。
MessagePack-RPC API は、後方互換性のために 0.6 でのメッセージ集約プロパティの変更の影響を受けていません。そのため、HTTP API とは一部異なります。
この API は 0.4.0 で削除されました。代わりに update_props
を使用してください。
指定したキューを削除します。
- name (string)
- 削除するキューの名前
指定したキューにメッセージを投入します。キューがなければ作成します。
- name (string)
- キューの名前
- content (object)
- 投入するデータで、形式は問わない
指定したキューからメッセージを取り出します。キューがなければ作成します。
timeout を指定し、タイムアウトした時は empty
文字列が返ります。
type
が "package" の場合、content
は push
されたデータの配列になります。
- name (string)
- キューの名前
- timeout (float)
- タイムアウトまでの秒数
- id (string)
- メッセージの ID
- type (string)
- メッセージのタイプ。normal: 通常、package: パッケージ
- content
- push() により投入されたデータ
正規表現にマッチする全てのキューにメッセージを投入します。
- regexp (string)
- 正規表現
- content (object)
- 投入するデータで、形式は問わない
pull_any(regexp[, timeout]) -> {"queue": name, "id": id, "type": type, "content": content} | "empty"
正規表現にマッチするキューの中から、最も早く取り出せたメッセージを取得します。
timeout を指定し、タイムアウトした時は empty
文字列が返ります。
type
が "package" の場合、content
は push
されたデータの配列になります。
- regexp (string)
- 正規表現
- timeout (float)
- タイムアウトまでの秒数
- name (string)
- キューの名前
- id (string)
- メッセージの ID
- type (string)
- メッセージのタイプ。normal: 通常、package: パッケージ
- content
- push() により投入されたデータ
メッセージの完了報告をし、キューからメッセージを取り除きます。pull() により取り出されたメッセージが一定時間内に完了しなかった場合、LMQ は自動的にメッセージを再送します。
メッセージが再送されると、古い ID は無効になり、完了報告が失敗します。
- name (string)
- キューの名前
- id (string)
- 完了報告するメッセージの ID
メッセージの再送タイマーをリセットします。 これにより、再送までの時間を延長することができます。
メッセージが既に再送されていた場合、呼び出しは失敗します。
- name (string)
- キューの名前
- id (string)
- 再送をリセットするメッセージの ID
メッセージをキューに戻します。メッセージは即座に再送されます。
- name (string)
- キューの名前
- id (string)
- キューに戻すメッセージの ID
キューのプロパティを更新します。キューがなければ作成します。
変更したいプロパティだけ指定すれば、残りはデフォルト値が使用されます。
また、property
自体を省略すると、全てデフォルト値に設定されます。
- name (string)
- キューの名前
- property (dict)
- キューの動作に関わるプロパティ
デフォルトプロパティを設定します。既存の内容は完全に上書きされます。
props_list は [[regexp, property], ...] の構造を持つリストです。 キューの作成時に、新しいキューの名前が regexp にマッチするかを先頭から評価していき、初めてマッチした property を使用します。どのルールにもマッチしなければ、システムのデフォルトを使用します。
設定されているデフォルトプロパティを取得する。