Skip to content

Commit

Permalink
Update 1. 初めに (Introduction).md
Browse files Browse the repository at this point in the history
  • Loading branch information
kidayasuo authored Mar 17, 2024
1 parent fa385b7 commit e1a6e83
Showing 1 changed file with 22 additions and 25 deletions.
47 changes: 22 additions & 25 deletions drafts/1. 初めに (Introduction).md
Original file line number Diff line number Diff line change
Expand Up @@ -5,55 +5,55 @@

`なぜこの文書が必要なのか。説得力のある形で。`

印刷における日本語組版規則は、明治当時の最新技術であった金属活字の技術のもとで、組版作業者が美しく読みやすい組版を経済的効率性を以って作成できるような指針として生まれた。それは金属活字や印刷が持っている可能性と同時にその制約を反映したものとなっている。その前提はデジタルデバイス上で根底から変わる。デジタルデバイスは印刷とは根本的に異なる技術的基盤の上に成り立っている
Webに代表されるデジタルテキストの組版は、印刷の組版とは根本的に異なる技術的基盤を持っている

例えば、印刷とデジタルデバイス(webと言った方が良いか)では組版がどこで、どのように起こるかが大きく異なる。印刷においては送り手が組版を決定する。組版は人手による調整が加えられ、印刷というプロセスを用いて画像として固定され、そして単一のコピーが受け手の元に届けられる。対してデジタルテキストでは受け手が組版を決定する。組版の決定は各々の受け手の環境を反映してソフトウェアが動的に、かつ完全に自動的に行う。受け手の環境が単一でないため、例えば行の折り返し位置は受け手ごとに異なる可能性がある。結果膨大な数の異なる組版結果が生成される。
一つの根本的な違いは、組版がどこで、どのように起こるかだ。印刷においては送り手が組版を決定する。組版は人手による調整が加えられ、印刷というプロセスを用いて画像として固定され、そして単一のコピーが受け手の元に届けられる。対してデジタルテキストでは受け手が組版を決定する。組版の決定は各々の受け手の環境を反映してソフトウェアが動的に、かつ完全に自動的に行う。受け手の環境が単一でないため、例えば行の折り返し位置は受け手ごとに異なる可能性がある。結果膨大な数の異なる組版結果が生成される。

このような違いは、デジタルテキストの組版に、従来の印刷にはなかった制約を加え、また同時に新たな可能性を与える。しかるに、従来の努力の多くは、従来の印刷をそのままデジタルデバイスで再現することに払われて来た。ワープロやページレイアウトソフトウェア、PDFといったページ物のアプリケーションはその素晴らしい成果だ。また「日本語組版の要件」は印刷で培われ確立された日本語組版規則を記述し、それがデジタルデバイスにおいて実装されることに大きな役割を果たしてきた。
このような違いは、デジタルテキストの組版に、従来の印刷にはなかった制約を加え、また同時に新たな可能性を与える。しかるに、従来の努力の多くは、従来の印刷をそのままデジタルデバイスで再現することに払われて来た\*1。ワープロやページレイアウトソフトウェア、PDFといったページ物のアプリケーションはその素晴らしい成果だ。また「日本語組版の要件」は印刷で培われ確立された日本語組版規則を記述し、それがデジタルデバイスにおいて実装されることに大きな役割を果たしてきた。

この文書ではデジタルテキストが本来的にもつ制約を前提として捉え、デジタルデバイスの土壌から立ち現れる組版がどのようなものになるか、デジタルネイティブな日本語組版の姿を考える一助となるように執筆した。それは次の節で見るようにユニバーサルデザインなどに新たな可能性を内包しており、日本語テキストを将来に繋げてゆくために必要な仕事だと思われる。
`*1 「書写から印刷へ、馬車から自動車へ、基盤技術が変わるときにはその前の技術の模倣から始まった」といった技術基盤が変わるときに繰り返されてきた歴史について説明する? 今「しかるに」で繋いでいるので、従来の努力に対して少々ネガティブな印象を与えてしまう懸念がある。それは意図ではなく正常な過程として捉えるべき。
Side Note で「世界最初の自動車による速度違反は制限時速3キロのところをその4倍の速さで走っていたところを自転車で追っかけてきた警官に捕まったもの」 との逸話を紹介するのも印象的で良いかも。`

「日本語組版の要件」が印刷における組版という既に確立された規則を記述しているのに比べ、この文書は日々進化しつつあるデジタル環境における組版について論じている。よって、将来新しい知見が得られた時に、それを取り込んで変化してゆくことが必要となろう。将来のバージョンでは3次元空間上でのルビの配置を論じているかもしれない
この文書ではデジタルテキストの組版が本来的にもつ性質を前提として捉え、その土壌から立ち現れるデジタルネイティブな日本語組版がどのようなものになるか、その姿を考える一助となるように執筆した。それはより高度な日本語組版の実装を助け、また日本語テキストに新たな可能性を与えて将来に繋げてゆくために必要な仕事だと思われる

既刊の「日本語組版の要件」が印刷における組版という既に確立された規則を記述しているのに対し、この文書は日々進化しつつあるデジタル環境における組版について論じている。よって、将来新しい知見が得られた時に、この文書もまたそれを取り込んで進化してゆくことが必要となろう。

`• 上で暗黙に示されているが、この文書はwebやメール、メモなどに代表されるようなユーザー環境によって変化するリフロー可能なテキストを主な対象とする。それをどこかで説明。もしくは最初の「デジタルテキスト」を「webテキスト」に変えて、後に一般化するか?`

`• 書写から印刷へ、馬車から自動車へ、基盤技術が変わるときに模倣から始まり、そこから離れて羽ばたいた。世界最初の速度違反は制限時速3キロのところをその4倍の速さで走っていたところを自転車で追っかけてきた警官に捕まったもの。この辺りの歴史を技術基盤が変わるときの背景として説明する?`


## 2. デジタルテキストは印刷とどのように異なるか
本論に入る前に、デジタルデバイスにおける組版の性質を少し掘り下げておく。
本論に入る前に、デジタルテキスト組版の性質を少し掘り下げておこう。

ここで、デジタルテキストとは、Webやメールにあるように、受け手のデバイスなどの環境によって柔軟に表示を変えることのできるテキストを指している。

#### 例外的な入力に対してでも破綻せず合理的な組版を完全に自動的に決定できる必要がある
従来の組版規則は人間が組版を実行するための原則として生また。時代を経て緻密化したが、人によるケースバイケースの処理を期待するという性質を受け継いでいる。対して、デジタルデバイスにおける組版はソフトウェアにより受け手の目の前で実行され、人の目によるチェックと訂正が介在する余地がない。よって例外的な入力に対してでも破綻せず合理的な組版を完全に自動的に決定できる必要がある
従来の組版規則は人間が組版を実行するための原則として生また。時代を経て一部自動化され緻密化したが、人によるケースバイケースの処理を期待するという性質を受け継いでいる。対して、デジタルテキストの組版はソフトウェアにより完全に自動的に実行され、人の目によるチェックと訂正が介在する余地がない。よって例外的な入力に対してでも破綻せず合理的な組版を決定できる必要がある

#### 多様な組版結果が生み出される
#### リフローを起こす
デジタルテキストにおいては送り手が組版結果を厳密に指定することができない。送り手はCSSやリッチテキストなどを用いて組版の大枠を指定するが、最終的な結果はそれぞれの受け手の環境や好みに従う。特に行長はデバイスの画面サイズやウィンドウのサイズに従って決定されるため、あらかじめ予見したり、指定したりすることができない。その結果、どこで行が折り返されるのか、長いグループルビが行の途中に来るのか折り返しにぶつかってしまうのか、ページに区切られたテキストの場合、どこでページが区切れるのか、そもそも全体が何ページなのか、どれも送り手側では知ることができない。ページが一定でないため、引用、参照の方法としてページ番号を使うことができない。これは重要な点だ。

#### 冊子形態が利点を失う
内容が固定の大きさのページに分かれた本、冊子本の発明は歴史的に見て印刷の発明に勝るとも劣らない大きなインパクトがあったと言われている\*¹。それは冊子の形がそれ以前から存在した巻物に対して大きな優位性を持っていたからだ。冊子は四角く、背表紙があるため収納・管理が容易である。ページ番号によりランダムアクセスが可能で、番号による安定的な参照が可能となる。しかしデジタルテキストによる冊子本はこれらの優位点を全て失う。収納・管理の容易性、ランダムアクセス性はデジタルデバイスの性質として冊子本の形式に頼らずに達成されており、またリフローによりページ番号による参照の安定性を失う
内容が固定の大きさのページに分かれた本、冊子本の発明は歴史的に見て印刷の発明に勝るとも劣らない大きなインパクトがあったと言われている\*¹。それは冊子本の形がそれ以前から存在した巻物に対して大きな優位性を持っていたからだ。冊子本は四角く、背表紙があるため収納・管理が容易である。ページ番号によりランダムアクセスが可能で、ページ番号による安定的な参照が可能である。しかしデジタルテキストによる冊子本はこれらの優位点を失う。収納・管理の容易性、ランダムアクセス性はデジタルデバイスの性質として冊子本の形式に頼らずに達成されており、またリフローによりページ番号による参照の安定性を失う

Webで巻物、スクロールという古い形式が復活し、また目的に沿った新しい画面構成がさまざまに試されている
Webで巻物、スクロールという古い形式が復活し、また目的に沿った新しい画面構成がさまざまに試されている

\*¹ アンドルー・ペティグリー『印刷という革命:ルネサンスの本と日常生活』桑木野幸司訳、白水社、2015年、 p18-21 (Andrew Pettegree、 The Book in Renaissance、 NewHaven、 Yale University Press、 2010)

#### ページの存在に依存した組版要素が使えない
例えば脚注
#### 巻物ではページの存在に依存した組版要素が使えない
例えば脚注や段組

#### 活字における作業効率の影響がない
印刷における日本語組版の規則は、活字時代に基礎を持っており、その当時の作業効率からくる制限を持ち続けている。例えば、全角二分三分などの全角を基準とした単位は組版の効率にとって重要であった。しかし浮動小数点計算を基準とするデジタルデバイスにおいては全角の整数分の一を基準とする長さは効率に関係がない。
印刷における日本語組版規則は、明治当時の最新技術であった金属活字の技術のもとで、組版作業者が美しく読みやすい組版を経済的効率性を以って作成できるような指針として生まれた。それは金属活字や印刷が持っている可能性と同時にその制約を反映したものとなっている。その前提はデジタルデバイス上で変化する。例えば、全角二分三分などの全角を基準とした単位は組版の効率にとって重要であった。しかし浮動小数点計算を基準とするデジタルデバイスにおいては全角の整数分の一を基準とする長さは効率に関係がない。

#### 高速に組版を実行できる必要がある
デジタルデバイスにおいては大量のテキストの組版を一瞬で完了させる必要がある。特に、ウィンドウのサイズを変える、文字の大きさを変えるなど動的な挙動を操作に追従して滑らかな動きとして見せるためには、アニメーション動画において動きをスムースに見せるために必要な速度と同じ、毎秒数十コマの速度で組版を完了して画面を更新する必要がある。ゆえに組版の規則は高速な実行を可能にするものである必要がある。一般的に言って、デジタルデバイスは狭い範囲を見ながら前方に処理を進めてゆく時に効率がよく、前後を見比べてといった動作には時間がかかる
デジタルデバイスにおいては大量のテキストの組版を一瞬で完了させる必要がある。特に、ウィンドウのサイズを変える、文字の大きさを変えるなど動的な挙動を操作に追従して滑らかな動きとして見せるためには、アニメーションにおいて動きをスムースに見せるために必要な速度と同じ、毎秒数十コマの速度で組版を完了して画面を更新する必要がある。ゆえに組版の規則は高速な実行を可能にするものである必要がある。

#### 紙面のコストが存在しない
歴史的に書写や印刷において、紙自体、つまり紙面のコストが大きく、それが組版に大きな影響を与えてきた。例えばパラグラフの示し方の変遷はその一例である。
歴史的に書写や印刷において、紙自体、つまり紙面のコストが大きく、それが組版に大きな影響を与えてきた。例えばパラグラフの示し方の変遷はその一例である。また辞書で見る省略形もその影響の一例である。しかしデジタルデバイスにおいてはそのコストは存在しない。

#### 画面の大きさの制約がある
デジタルデバイスにおいては紙面のコストは無視することができるが、その代わりに画面の大きさから制約を受ける
デジタルデバイスにおいては紙面のコストは無視することができるが、その代わりに画面の大きさからの制約を受ける

#### 検索、選択、コピー&ペースト、異なったスタイルの適用、リユース
中身。ましなタイトル
デジタルデバイスならではの動的な要素。ましなタイトルが必要

#### インタラクティブな表示の活用
ユーザーの操作に応じたインタラクティブな動作が可能であるので、例えば注釈をオーバーレイとして表示させるなど、新たな組版の可能性を考えることができる。
Expand All @@ -77,6 +77,7 @@ Webで巻物、スクロールという古い形式が復活し、また目的
きめ細やかな表示の最適化が可能になることにより、アクセシビリティの枠を超え、万人にとってのユニバーサルデザインを追求することができるであろう。

## 3. 対象読者

デジタルデバイスにおいてはテキストを作成する環境にも従来との違いがある。書き手の役割が増えたことである。印刷のモデルでは、書き手はもっぱら素のテキストを提供することが役目であり、書き手が組版の知識をもつ必要はなかった。しかしデジタルデバイスにおいては、各々の書き手は組版の担い手の一人となる。特に書き手が文字を特定する。正しい文字が使われていることは正しく組版を行うのに必要。よって、この文書はシステムへの要件としでだけではなく、書き手も読者対象とした。

(デジタルデバイスでは入力しながら組版をしている。)
Expand Down Expand Up @@ -109,8 +110,4 @@ Webで巻物、スクロールという古い形式が復活し、また目的

#### 位置付け、書き方
- 規範というよりガイドライン。「推奨」と「要件」は明確に分けて、わかるように書く
- 背景を示す:組版機能に対し、なぜそのような方法になっているのか、その理由を示すことでより良い理解を助ける。組版の方法や値が複数ある場合や、明確な答えがない場合には、その機能を考える際に重要な要素を示すことで独自の判断を助ける。結果のみではなく理由を示すことで、そこで示されている方法と異なった方法を試みることを可能にし、また議論と将来の進化を促すような内容にする。背景理解に役に立つ場合歴史的な経緯を示す。ただし歴史そのものが目的ではないので注意。

#### メモ
- プロポーショナルな要素を多く含むテキスト、またプロポーショナルな和文書体の扱いをどうするべきか? 活字の現れる前は和文もプロポーショナルであった
- 組版指定がなくても自動的に動くべき機能、言い換えるとプレーンテキストでも動くべき機能、ルビのように作成者による指定が必要な機能、そしてフォントサイズのようにエンドユーザーの選択が可能であるべき機能などの区別がある。印刷ではそれら全てを組版を行うものが決め、固定していた。この点を意識して記述する必要がありそうだ。
- 理由を説明する。背景を示す:組版機能に対し、なぜそのような方法になっているのか、その理由を示すことでより良い理解を助ける。組版の方法や値が複数ある場合や、明確な答えがない場合には、その機能を考える際に重要な要素を示すことで独自の判断を助ける。結果のみではなく理由を示すことで、そこで示されている方法と異なった方法を試みることを可能にし、また議論と将来の進化を促すような内容にする。背景理解に役に立つ場合歴史的な経緯を示す。ただし歴史そのものが目的ではないので注意。

0 comments on commit e1a6e83

Please sign in to comment.