2020-09-26 by Meister
2022-02-20 ROMブートの不具合修正
2022-02-23 8255の初期化を追加,簡易マシン語モニタを実装
8bit パソコン シャープ X1シリーズのエミュレータ等で使用可能なフリーの互換IPL ROMイメージです。
実機のIPLと無関係に,フルスクラッチで実装しています。
シャープ X1はROMをほとんど搭載しないクリーン設計であり,IPL ROMさえ互換実装を準備すれば実機を所有しない人でも合法的にエミュレータを使用することができます。
過去に公開された互換実装として,X1エミュの部屋( http://www.turboz.to/ )に掲載されていた,ぷにゅ氏作の IPL ver1.01(x1ipl101.zip,IPLROM.z80)があります。 しかし配布元のページが閉鎖されて久しいこと,今一つライセンスが明確でないことから広くお勧めすることが難しい状況です。また,あくまでイレギュラーな使用をした時の挙動ですが,CRTCの初期化を行わないためX1 turboエミュレータにturbo BIOSの代わりに読み込ませても,正しく起動できません。
そこで,新たにフルスクラッチでエミュレータ用の互換IPLを作成しました。
以下のデバイスからの起動が可能です。
- FDD ドライブNo.0~3
- CMT(カセットテープ)
- BASIC ROM (CZ-8RB)
- EMM0
- メインRAM 0番地
以下のデバイスからの起動はできません。
- HDD
また,以下の機能が未実装です。
- 内蔵タイマーの設定
独自拡張として以下の機能を実装しています。
- 簡易マシン語モニタ
ファイル X1_compatible_rom.bin をエミュレータ等に読み込ませます。例えばeX1の場合ならIPLROM.X1にリネームしてx1.exeと同じフォルダに置きます。詳細は各エミュレータ等の説明を参照してください。
X1_compatible_rom.bin以外のファイルはソースファイルです。通常の使用では不要です。
- 起動時にFD0にディスクイメージが挿入されている場合,FD0からブートフラグのあるプログラムを探して起動します。
- ディスクが未挿入の場合,以下のようなメニューが表示されます。
Press selected key to start driving:
0-3:FDD
C:CMT
R:ROM
E:EMM
M:Mon
#:RAM
キー入力 | 機能 |
---|---|
0,1,2,3 いずれか | FD0,1,2,3 から起動 |
C | カセットテープから起動 |
R | CZ-8RBから起動 |
E | EMM0から起動 |
M | 簡易マシン語モニタ |
# | RAM0番地から起動 |
- Rキーを押すと,CZ-8RBに実装されたBASIC ROMから起動します。ただし多くのエミュレータでは BASIC ROM が実装されていない(※)と思います。
- Eキーを押すと,EMM0 から起動します。EMM0は適切にフォーマットされ,OS等が転送されている必要があります。
- CZ-8RBのROMイメージはバイト単位でオフセットを指定しますが,EMMはセクタ(256バイト)単位です。
- #キーでメインRAMの0番地から起動します。S-OS使用中に間違えてIPLリセットした場合等に有効ですが,メモリの状況によっては暴走します。
※eX1の2020-12-06版に実装されました。感謝。
コマンド | 機能 |
---|---|
B <デバイス> | 起動デバイスの切替えとブートセクタ読込み |
D <アドレス> | メモリダンプ(アドレス省略可) |
E <アドレス> | メモリ書込み |
J <アドレス> | アドレスジャンプ(IPL ROMを切り離す) |
G <アドレス> | アドレスジャンプ(IPL ROMのまま) |
R | 起動メニューに戻る |
# | 画面クリア |
実機の雰囲気を残しつつ,完全互換を狙わない方針で実装しています。
- タイマが未実装です。
- turboのIPLについての解説を参考に,RAMからの起動機能を追加しました。
- EMMからの起動機能を追加しました。
- テープドライブ搭載の実機を使用したことがないため,テープ周りの実装は推測で行っています。(CZ-8FB01 ver2.0のディスクに収録されているCZ-8CB01をエミュレータ上でテープイメージに書き戻し,動作確認に使用しました)
- 各種文献を参考に,以下のエントリアドレスに同様のルーチンを実装しています。他のルーチンに依存するプログラムは誤動作するでしょう。
アドレス | ルーチン |
---|---|
0066 | NMIリセット |
021a | IPL用ディスクREAD |
038a | IPL用KEY入力 |
03cb | IPL用メッセージ表示 |
03d9 | IPL用1文字表示ルーチン |
DRAMを使用しているシステムではメモリのウォーミングアップが必要ですが,行っていません。最近読んだ「ザイログZ80伝説」(鈴木哲哉著,ラトルズ)で必要性をはじめて知りました。不勉強でした。(注・実機ROMのリバースエンジニアリングを行っていないため,実機が本当にやっているかどうか確信なし)
エミュレータでは全く問題ありませんが,本物のROMに焼いて実機やレプリカ機で使用する場合に問題あるかもしれません。
当初IPL ROMの容量を1KBと勘違いしていたため,かなり無理をしながら詰め込んであります。結果,約2KB残っていますのでTinyBASICを載せるのも面白いかもしれません。
X1互換 8x8ドットフリーフォント ( https://github.com/meister68k/X1_compatible_font )
- IPL ver1.01(x1ipl101.zip,IPLROM.z80), ぷにゅ, http://www.turboz.to/ (閉鎖)
- X1 turbo BIOSの解析, 稲葉 康治, Oh!MZ 1985年1月号, p.97~109
- IOCS DATA LIST, 泉 大介ら, Oh!MZ 1986年11月号, p.76~
- 試験に出るX1, 祝 一平, 日本ソフトバンク, 1987
- HuBASIC Format詳細, BouKiCHi, https://boukichi.github.io/HuDisk/HuBASIC_Format.html 2020-07-31 閲覧
- 試験に出ないX1 第0章 まだまだ完全無欠にならないI/Oマップ, X1cetner, http://www.x1center.org/sdx1/sdx1_0.html 2022-02-23 閲覧
開発にあたり武田氏のX1エミュレータ eX1 ( http://takeda-toshiya.my.coocan.jp/ )を全面的に使用しました。ICE以上に強力なeX1のデバッグ機能のお陰でこのプラグラムを作りえたと思います。また,ソースが公開されているおかげでCZ-8RBのエミュレーションを組み込んで試すことができました。
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