title | author |
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四季マニュアル |
ryu-raptor |
四季は和欧混文にアキを挿入して簡単なタイポグラフィを実現します.
四季(shiki) inserts "aki"s in your plain text for typography.
README.inserted.md
はテキストを四季で処理したものです.
日本語とEnglishが混じったpassageは適度なスペース(spaces)を挿入しましょう.
↓
日本語と English が混じった passage は適度なスペース (spaces) を挿入しましょう.
Table of Contents
コンピュータで平文テキストを記述する際に欧文と和文の間にスペースを入れる習慣があります. これは平文として読んだときの見栄えを考えて行われることで,LaTeXのような組版を行うソフトウェアならそのようなアキを自動で挿入します.
スペースの挿入は見栄えやキーワード補完の際に役立ちますが,文意とは関係なく,スタイルと内容を分離するという原則に反します(たとえば,LaTeXはこのようなスペースを内容だと解釈するため,自動アキ挿入に問題が生じます).
四季はスペースを挿入せずに記述した平文テキストに後で適切にスペースを挿入することでこの問題を解決します. つまり,書くときにはスペースを入れずに書いて,公開の際に見た目を調整するスペースを入れるといったことができます.
たとえば,Jekyllなどのデプロイの際にこの処理を行えば,ローカルのMarkdownをスペースクリーンにすることができます.
Luaのパッケージマネージャであるluarocksを利用してインストールできます. luarocksがインストールされていれば,Windows/Linux/Macのいずれでも動くと思います.
バージョン1.3-0はlyamlというCのコンパイルが必要なライブラリを利用していますので,Windowsではコンパイラのインストールが必要です. バージョン1.3-1からCを用いていないlua-yamlに変更したため,コンパイラを導入できない場合はこちらをご利用ください.ただし,lua-yamlはYAML仕様に準拠していないため,サンプルの設定ファイルのようにインデントをしっかり入れてください.
- 最新版をインストールする場合
luarocks install shiki
- バージョン1.3-0をインストールする場合
luarocks install shiki 1.3-0
これだけです.
aki your_input_plain_text_files ...
入力をすべてまとめて変換し,標準出力に結果を出力します.
ファイルに出す場合はtee
などと組み合わせてください.
aki your_input_plain_text_files ... | tee output_file
バージョン1.1-0
から-o
/--output
オプションでファイルに直接出力できます.
aki your_input_plain_text_files ... -o output_file
aki your_input_plain_text_files ... --output output_file
現在エンコーディングはUTF-8のみサポートしています.
コード領域やコメント領域などスペースを勝手に入れられると困る場合があります. バージョン1.3から処理を除外できる機能が追加されました.
-e
/--escape
オプションで利用できます.
aki --escape <file> ...
aki -e <file> ...
デフォルトでは以下の記述を除外します.
始まり(begin) | 終わり(end) | 備考 |
---|---|---|
<pre> |
</pre> |
HTMLの非フォーマット領域 |
<code> |
</code> |
HTMLのコード領域 |
``` |
``` |
pandocのコードフェンス |
`` |
`` |
pandocのエスケープインラインコード |
` |
` |
pandocのインラインコード |
<!-- |
--> |
HTMLのコメント領域 |
ただし,各フォーマットのパーサではないので複雑なケースには対応できません.ご注意ください.
(例:`
の中に`
を入れる,<pre>
の中にエスケープしていない<pre>
が入っている,バックスラッシュでエスケープするなど)
バックスラッシュのエスケープは正規表現を実装でき次第利用できると思います.
YAMLで記述した設定ファイルを利用できます.
-c
/--escape-config
オプションで指定します.指定された場合は--escape
オプションが指定されたように振る舞います.
スキーマは次のとおりです
type: array
items:
type: object
properties:
begin:
type:
- string
- array
end:
type:
- string
- array
例
- begin: <pre>
end: </pre>
- begin: <code>
end: </code>
- begin: <!--
end: -->
現在の仕様は次のとおりです.
- 和文(ひらがな,カタカナ,漢字)と英語のアルファベット,半角アラビア数字の間にアキを入れる(betweenルール).
- 和文に続く半角横書き句読点,半角約物(後述)に適切なアキを挿入する(before / afterルール).
以降"_
"は挿入されるアキを意味します.
アキは現在半角スペースです.
和文と欧文の間にアキを入れます.
エンコーディングはUTF-8のみサポートしています
↓
エンコーディングは_UTF-8_のみサポートしています
LaTeXはアキを入れてくれます
↓
LaTeX_はアキを入れてくれます
beforeルールに該当するのは
- 開きカッコ
afterルールに該当するのは
- 閉じカッコ
- 句読点類
欧文では開きカッコの前にアキを入れることが慣習とされています.
プログラミング(programming)
↓
プログラミング_(programming)
欧文では閉じカッコの後にアキを入れることが慣習とされています.
プログラミング(programming)とはプログラムを記述することです
↓
プログラミング_(programming)_とはプログラムを記述することです
また,カンマ・コロンの後にもアキを入れることが慣習とされています.
しかし,そうは行かなかった
↓
しかし,_そうは行かなかった
LaTeX,もしくはWordで提出してください
↓
LaTeX,_もしくは_Word_で提出してください
はい.わかりました
↓
はい._わかりました
beforeルール,afterルールのいずれの場合も,文頭,文末の場合はアキを入れません.
(役者A)了解しました.
↓
(役者_A)_了解しました.
↓×
_(役者_A)_了解しました._
以下は四季が絶対にしないことです.仮にした場合はバグです.
全角約物は既に適切なアキが入っているため,アキを入れません.
- カッコ類
有機EL(ゆうきいーえる)は次世代のディスプレイ素材です
↓
有機_EL(ゆうきいーえる)は次世代のディスプレイ素材です
- 句読点類
それはつまり,どういうことだ?
↓
それはつまり,どういうことだ?
はい.わかりました.
↓
はい.わかりました.
既に述べたとおり,文末と文頭にはアキを入れません.
(役者A)了解しました.
↓
(役者_A)_了解しました.
↓×
_(役者_A)_了解しました._
接続約物は垂直線(|
)やハイフン(-
)のことを指します.
詳しくは付録のunicode.range.joint
をご覧ください.
単語を意図的にくっつけるために利用するため,アキを入れるのは不適切だと判断しました.
ただし,スラッシュなどアキを入れるべき例もあるため,何を接続約物とするかは要議論です.
接続-テキスト
↓
接続-テキスト
↓×
接続_-_テキスト
接続|テキスト
↓
接続|テキスト
↓×
接続_|_テキスト
次の例は現在のバージョンではアキが入りませんが,将来入れるか選択できるかもしれません.
アルファ/ベータ線
↓
アルファ/ベータ線
↓?
アルファ_/_ベータ線
「スラッシュ 空白」などで検索をかければ関連する話題が見つかります. どちらの場合もあるらしいので,選択できるようにするのが良いと(ryu-raptorは)考えています.
単純にスペースを挿入します.Microsoftのドキュメントなどでは特殊なルール分けがありますが,四季では対応する予定がありません. 理由としてLaTeXの単純な挙動を目標としていることが挙げられます. ただし,コードブロックではアキを入れない,などといった例外規則は導入するかもしれませんので,それを応用して各自で対応することはできるかもしれません.
わかってる範囲で,されると困る挙動を挙げておきます.
一番困るのがこのREADME.md
のような,あえてスペースを入れない箇所がある文章の場合です.
README.inserted.md
をご覧になれば分かるようにコードブロックだろうが何だろうがスペースを入れます.
スペースの有無で意味が変わってしまうようなテキストが含まれている場合は事前にどうなるか確認してください.
ただし,バージョン1.3から指定した記号で囲まれた範囲の処理を飛ばすことができます.詳しくは使い方をご覧ください.
フォーマッタ全般に言えることですが,不可逆変換です.
不用意に上書きしないように注意してください.
差分をとったり,バージョン管理システムで管理することをおすすめします.
今は実装していませんが,次のような機能を将来追加する予定です.
- 欧文についてもアキを入れる(現状和文との境界部分しか見ていません)
- UTF-8以外にも対応
- 他言語バインディング(Rubyなど)
- 処理の除外の設定における正規表現の利用
- Unicodeに対応した独自のパーサを利用しているため,未だ実装していない
- スペースではなく,任意のマークアップ要素(
<span>
など)で欧文を囲って,後ほどCSS等で調整できるようにするオプションの追加.aki --enclose '<span class="shiki-aki">'
などを予定
JekyllのGenerator機能を使えば,自動的に出力にスペースを挿入できます. 四季はRubyで書かれていませんので,シェル呼び出しから利用するのが一番簡単だと思います.
WIP
MITライセンスで提供します.
約物類について,現在の最新安定版(luarocksが出ている中で)で取り扱えるものをリストします.
beforeルール | afterルール |
---|---|
( U+0028 |
) U+0029 |
[ U+005b |
] U+005c |
{ U+007b |
} U+007d |
afterルール |
---|
, U+002c |
. U+002e |
! U+0021 |
? U+003f |
¡ U+00a1 |
¿ U+00bf |
Unicode standard 13.0をベースに次のような範囲となっています.これはshiki/unicode.lua
とshiki/char-category.lua
で確認できます.
なお,必要に応じてこの範囲は変更される予定です.変更が既存の仕様の拡張とならない場合はメジャーバージョンが上がります.
- 文字範囲
---- 文字
-- 基礎ラテン文字
-- http://www.unicode.org/charts/PDF/U0000.pdf
unicode.range.basicLatain = {{0x41, 0x5a}, {0x61, 0x7a}}
-- 付点つきラテン文字(Latain-1 supplement)
-- http://www.unicode.org/charts/PDF/U0080.pdf
unicode.range.latain1 = {{0xc0, 0xd6}, {0xd8, 0xf6}, {0xf8, 0xff}}
-- アラビア数字
-- http://www.unicode.org/charts/PDF/U0000.pdf
unicode.range.arabicNumeric = {{0x30, 0x39}}
-- ひらがな
-- http://www.unicode.org/charts/PDF/U3040.pdf
unicode.range.hiragana = {{0x3040, 0x309f}}
-- カタカナ
-- http://www.unicode.org/charts/PDF/U30A0.pdf
unicode.range.katakana = {{0x30a0, 0x30ff}}
-- 漢字
-- http://www.unicode.org/charts/PDF/U4E00.pdf
unicode.range.kanji = {{0x4e00, 0x9fcf}}
---- 約物
-- http://www.unicode.org/charts/PDF/U0000.pdf
-- 開きカッコ類
unicode.range.openBracket = {0x28, 0x5b, 0x7b}
-- 閉じカッコ類
unicode.range.closeBracket = {0x29, 0x5d, 0x7d}
-- 句読点類
unicode.range.punctuation = {0x2c, 0x2e, 0x7d}
-- スラッシュ類(/|)
unicode.range.separator = {0x2f, 0x7c}
-- 空白類 (SP, EOF, etc...)
unicode.range.space = {{0x00, 0x20}}
-- 接続約物(ハイフン,アンダースコア)
unicode.range.joint = {{0x23, 0x26}, 0x2d, 0x5f}
- 和文文字か欧文文字か約物か
shiki.category.wabun = unicode.mix_range(
unicode.range.hiragana,
unicode.range.katakana,
unicode.range.kanji
)
local yakumono = unicode.mix_range(
unicode.range.openBracket,
unicode.range.closeBracket,
unicode.range.punctuation,
unicode.range.separator,
unicode.range.space,
unicode.range.joint
)
shiki.category.oubun = unicode.mix_range(
unicode.range.basicLatain,
unicode.range.latain1,
unicode.range.arabicNumeric,
yakumono
)
現在の挿入プロセスは次のようになっています.
- 挿入点候補を列挙
- 原文を複製しながら挿入点までカーソルを進める
- 文字種を確認して適切な挿入を行う
- 2と3を繰り返す.
和文とそれ以外の境界点を取り敢えず全部列挙します.
たとえば
この文章(passage)は(じつは)和文が含まれている.
なら,つぎの|
が挿入点候補です.
この文章|(passage)|は|(|じつは|)|和文が含まれている|.
割とたくさんあります.正直無駄だと思ってるので今後改善していきたいです.
原文を結果に複製していきますが,挿入点の次の文字で止まります.
この文章|(passage)|は|(|じつは|)|和文が含まれている|.
なら,一番はじめの(
を複製せずに次のステップに行きます.
アキを入れるか入れないかを判断します.
挿入点の前後の文字をpre, postとすると,次のように判定します.
挿入ルール | 判定方法 |
---|---|
betweenルール | pre, postともbetween文字 |
beforeルール | postがbefore文字 |
afterルール | preがafter文字 |
between文字,before文字,after文字は次のようになっています(shiki/inserter.lua
より抜粋).
local rule = {
before = unicode.mix_range(
unicode.range.openBracket
),
after = unicode.mix_range(
unicode.range.closeBracket,
unicode.range.punctuation
),
between = unicode.mix_range(
shiki.category.wabun,
unicode.range.basicLatain,
unicode.range.latain1,
unicode.range.arabicNumeric
)
}
挿入ルールのいずれかにマッチした場合 アキ文字 + post を結果に複製します.そうでなければ単にpostを複製します.
改行などの制御文字と空白文字はパース時に「欧文」扱いであるため,挿入点とならないからです.
正直危ない実装です.
ピリオド類はafterルールであるため,ピリオドの後に和文が来ない限り空白が入りません.
はい...わかりました
↓挿入点
はい|...|わかりました
↓afterルール
はい|..._わかりました
↓
はい..._わかりました
これはルール通りですから問題ないですが,分かりにくいため,褒められた実装ではありません.
最近,秋を感じられる期間が短くなってる気がしませんか? 春夏冬みたいな...
アキを入れると四季になるためです.